わが子が「いじめの当事者になったら」と想像してほしい 17日から舞台「娘がいじめをしていました」上演
「いじめるわけがない」という思い込み
「皆さん、自分の子どもが人をいじめないと思っていますか」
いじめ問題が報告された保護者会の席上。いじめた子や親を責める声があちこちから上がる中で、被害者の母親が突然、こう発言する。既にいじめはネット上にさらされ、いじめた子を非難する書き込みが殺到して炎上。「うちの子がいじめをするわけがない」と、人ごとだと決め込む親たちに対する強烈な疑問符が突きつけられる。
上演するのは一般社団法人グランツ(神奈川県座間市)。代表理事で、演出を担当する飯田浩志さん(48)は自分の子どもがいじめに遭った経験がある。原作に加害者と被害者双方の物語が描かれていることなどから舞台化を申し入れたという。
いじめた子、いじめられた子の家庭はどこにでもありそうな普通の家族。わが子を信じ、守ろうとする姿勢は同じだ。ただ、いじめた子の母親は子どもの頃にいじめに遭い心に深い傷を負った過去があった。「私は死んでも許さない。いじめた側は反省したらそれでおしまい。間違いに気付けてよかったと美談にしちゃってない?」という思いもあって、わが子に厳しく当たる場面も出てくる。
被害者の傷が癒えているとは限らない
文部科学省によると、2023年度の小中高校などのいじめ認知件数は73万2568件で過去最高。小学校が58万8930件で大半を占める。全体の約77.5%に当たる56万7710件が「年度末までに解消した」とされている。「解消」は(1)ネットによるものも含めいじめにかかわる行為が少なくとも3カ月以上やんでいる(2)被害児童生徒が心身の苦痛を感じていないと、面談などによって確認する-の2要件が満たされている必要がある。だが、この舞台が示すように、いじめられた子どもの心身の傷が癒えているとは限らない。
しろやぎさんは高校の臨時講師として働いた経験がある。「学校では小さなトラブルがたくさんあると思うが、親として自分の子がこうなったらどうしようかと考えてもらえたら。いじめに関連したネットへの書き込みも、人を追い詰める可能性があると知ってほしい」と話す。
青森県の公立高の現役教諭で、いじめ自殺を巡る親子関係などを描く戯曲「親の顔が見たい」で知られる劇作家の畑澤聖悟さん(60)は、勤務校が年4回のアンケートを行うなど「以前より学校はいじめに過敏になっている」と語る。「親も子も、いつか当事者になるかも、という怖さがある。演劇は観客が物語を体験するメディア。自分事と感じながら見てほしい」と話している。

けいこをする出演者たち=東京都内で ©古山華誉
上演は25日まで、川崎市麻生区の市アートセンターアルテリオ小劇場で(20日と23日は休演)。一般5000円、高校生以下2000円。
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