SDGsを先取りしてきたベルマーク運動65年 現在の参加校の割合、最盛期と比べ収集点数は? ウェブ版も人気

有賀博幸 (2025年6月23日付 東京新聞朝刊)
 自身やわが子が学校に通っていた頃には一生懸命集めたのに、その後はご無沙汰-。「ベルマーク」にそんな思いを抱く人も少なくないのでは。ベルマーク運動が始まって65年。少子化で児童生徒数の減少や学校統合が進む中、現状はどうなっているのだろう。
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回収したベルマークを企業の番号別に仕分けるベルマーク委員会の児童ら=三重県伊勢市の小俣小で

子どもたちが集め、仕分ける

 ベルマーク運動に1963年から取り組む三重県伊勢市の小俣(おばた)小学校。60年余りで集めたマークの点数は累計1381万点。参加2万5788団体のうち、1300万点を突破した全国13団体の一校に入る(いずれも2024年3月末)。

 6月初旬、月1回開催の児童会ベルマーク委員会を訪ねた。5、6年の委員22人が、作業室で全校児童から回収したマークを企業別の番号に仕分けていく。黙々と励む6年の樋口香凛さん(11)は「最初は大変かと思ったが、やり始めると癖になる。休み時間も来てやっている」と伝統の活動を意気に感じている様子だ。

 仕分けられたマークの確認と点数計算は、PTAの教育設備委員会が担当。かつては50人弱の委員が年4回学校に集まっていたが、コロナ禍を機に自宅で集計し持ち寄るように。23年度に委員長を務めた岡明里さん(38)は「平日は勤めがあり、家でできてありがたいという声もあった。子どもたちのために無理なく楽しくやれれば」と話す。

 少子化の波は同校も例外でなく、児童数(656人)は10年前に比べ約100人減った。マークの収集点数は15年度の約28万点に対し、24年度は11万点余にとどまった。とはいえ、周辺のスーパーなど6カ所に置いた収集箱には、世代を問わず住民が入れていく。「1、2週間に1度回収に行くと、もう箱がいっぱいになっている。小俣小に協力するのが当たり前という感じで、学校と地域の一体感がある」と岡さん。

小学校の72%、中学の62%が参加

 ベルマーク教育助成財団(東京)によると、参加団体は開始当初の2263校が、2000年代初めに2万8000校を突破。06年度には大学や公民館にも参加対象を広げたが、その後、学校の統廃合などで減少に転じた。かつて70社ほどあった協賛企業も23年度末時点で45社に。これらの影響で、年間の収集点数は23年度は約3億点と、最盛期の半分以下にとどまる。それでも今なお、全国の小学校の72%、中学校の62%が参加する。

 近年増えているのが、個人から財団に直接送られる「寄贈マーク」だ。コロナ禍前は2~3000件だったのが、23年度は約6000件に上った。コロナ禍の“巣ごもり”で、誰もが手軽に始められるボランティア活動として再認識されているという。常務理事の福島範彰さんは「ベルマーク運動は、持続可能な開発目標(SDGs)の一つ『質の高い教育をみんなに』を先取りしてきた。設立の理念を大切にしながら、時代に応じて今後も役割を見直していく」と、幅広い協力を呼びかける。

収集・分類の手間いらずの方法も

 ベルマークのネット版ともいえる、収集などの手間がかからない「ウェブベルマーク」による支援方法もある。

 同財団など5団体でつくる「ウェブベルマーク協会」が運営。専用サイトを経由してネットショッピングをすると、事前に指定した学校のベルマーク預金口座に代金の一部が加算される。13年度開始以来、年々利用が増え、登録参加者は約21万人、支援点数は9800万点を超える(6月中旬時点)。

ベルマーク運動

 教育環境の整備を求めるへき地の学校の訴えをきっかけに、1960年に始動。参加団体は食品や菓子、文具など協賛企業の商品に付いているマークを集め、ベルマーク教育助成財団に送る。1点1円に換算され、積み立てたベルマーク預金で、協力企業が扱う体育器具や視聴覚教材、書籍などを購入できる。代金の10%はへき地校や特別支援学校、被災校、海外の教育支援に充てられる。援助累計額は50億円超。

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