いじめで不登校…心の支えだった「絵」が今は仕事に 22歳の大学生が伝える「学校に行くだけが人生じゃない」

描いた絵を手に「学校に行くことだけが生きることじゃない」と語る大村さん=浜松市北区で
小5からいじめ 人が怖い…中1で不登校
「来てくれて、ありがとう~」。浴衣姿の8頭身の女性キャラクターが、スマートフォンの画面で動き、話す。キャラクターの姿を借り、話しているのは大村さんだ。毎日トークライブを開いており、次々と閲覧者がコメントを書き込む。季節の話から始まり、アニメや漫画の話題で盛り上がる。「見ている人をあだ名で呼ぶ。相手の言葉を細かく拾い、反応を返す。配信を始めてコミュニケーション力がめっちゃ上がった」と笑う。10年前には考えられなかった。
いじめが始まったのは小学5年生。原因は、はっきり分からないが、机に落書きされたり、授業の話し合いで無視されたりした。親や担任に打ち明けても「気にしすぎ」と受け止めてもらえず人への不信感が強まった。人が怖くなり中学校でもつまずき、1年生の2学期から不登校となった。
1日1ページの達成感 転機になった手紙
部屋にこもったが、4歳から小学6年生まで教室に通って習った絵を、上達させたい気持ちがあった。親に絵画の本を買ってもらい、パソコンを使い1日1ページずつ写した。絵を完成させる達成感が、学校に通えない自分を支えてくれた。
転機は中学1年生の冬。母由実さん(56)が見学した不登校生が通う教室の生徒が、大村さん宛てに手紙をくれた。「待ってるよ」の文字を見て行くことにした。教室では卒業生が勉強を教えてくれ、通信制や定時制の高校に進学できることを伝えてくれた。「まだやり直しがきくんだ。先輩のように人に優しくなりたい」と思った。
人の気持ちを考えすぎる…「弱点は長所」
中学を卒業し、通信制の高校に進んだ。今も通信制の大学で歴史を学んでいる。昨年末、友人から「動画で絵を配信したい。お金を払うので描いて」と注文があり、絵を仕事にした。4月に始めたVチューバーの活動も、閲覧登録者が400人を超えた。「私を待ってくれている」。自分を認められるようになった。イラストの注文も4件入った。
由実さんは「人の気持ちを考えすぎる性格が、お客さんの要望をくみ取ることにつながっている。弱点は長所だった」と振り返る。
大村さんはいじめに悩む子どもたちに語り掛ける。「生きるのは大変なこと。でも、そこを頑張れば必ず救いの手が差し伸べられる。その手をとれるように、ゆっくり生き続けて」
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい