広がる「通信制高校」という選択肢 おおぞら高校に行ってみた 学校に拘束されず、やりたいことをやる時代へ
通学してもオンライン授業でもOK
今月上旬、通信制「屋久島おおぞら高等学校」(鹿児島県)の東京キャンパス(新宿区)。閑静な住宅街にある2階建ての校舎で、生徒たちはカナダ人教師の英会話の授業を受けていた。米軍が極寒の地に持ち寄る物資をグループで話し合いながら、重要度別に順位付けしていく。「コンパス?」「チョコも大事だよね」と盛り上がっていた。
教室にはモニターが設置され、横浜キャンパス(横浜市)にいる生徒2人がzoomで参加していた。教師は教室の生徒に声を掛けつつ、パソコン越しにオンラインの生徒の意見も引き出す。通学とオンラインのハイブリッド授業だ。
教室の最前列で楽しそうに話す佐藤航貴さん(17)=仮名、都内=は、午後2時半に始まったこの授業から登校した。午前中は自宅で受講。「早起きはしたくないから」と笑う。
佐藤さんの1日のスケジュールはこうだ。午前9時20分から授業を3コマ受けてから登校。昼食後は科外活動の時間で、週1回の写真部に参加する。午後は2時半からの3コマで、進学を目指すコースの英会話授業のほか、参考書を元に自身のペースで学習を進めている。コースは進学以外にも、保育士や介護福祉士を目指すものや、プログラミングなど7つから選べる。
教員不足 既存の学校の対応に不審感
佐藤さんは、都外の私立中に在籍していた時に不登校になった。2年時に友人関係がかみ合わなくなり、頻繁にある試験の重圧もあって、冬ごろから足が遠のいた。教師になったばかりの担任は忙しそうで、再登校への支援はなかった。中3の5月、学区内の公立中に転校。月2回スクールカウンセラーと給食を食べながら談笑するうち、「学校にいる大人」への信頼を取り戻していった。
高校は、毎日登校しなくていい通信制を希望した。おおぞら高校は、通学するかオンラインか、定期的に決められる。履修するコースは年度途中でも変更できる。佐藤さんは、高卒資格が得られる基礎コースから始め、進学コースに変えたのは2年の7月だ。この間にカナダとオーストラリアへの短期留学も経験し、「もっと英語を学びたい」と自信をつけた。
佐藤さんの母親は「本当は1年生から進学コースに行ってほしかったが、無理に行かせず本人のペースに任せてよかった」と目を細める。「最初からがんばりすぎると疲れてしまう」との担任のアドバイスのおかげだという。
同校は、3年以上在籍し、高校卒業に必要な74単位以上を修得、屋久島の本校に年に一度、数日通う「スクーリング」などを満たせば卒業できる。授業を受けられるサポートキャンパスは全国に約50あり、生徒は約1万2000人に上る。授業には、教員の他にコーチが1~2人付くという。
教師は教えるだけでなく、生徒の背中を押すコーチングも行う「マイコーチ」(担任)と呼び、生徒が選べるなど、独自の取り組みで本年度グッドデザイン賞を受賞した。広報の担当者は、「近年は一人一人にあったスタイルで学習を進め、留学やプログラミングなど専門性を高めようとする生徒が増えている」と話す。
学費に幅 卒業後の進路指導の質向上を
通信制高校は、全国で公立と私立を合わせて303校と増え続けている。専門出版社「学びリンク」(千代田区)の調べでは、入学金を含む学費の平均は公立が年2万円程度なのに対し、私立は年40万円以上、週5日利用のコースでは年100万円近い場合もある。都内在住者は都独自の制度で無償化の対象になるが、上限は26万5000円と学費のハードルが高くなる場合もありそうだ。
全国私立通信制高等学校協会によると、全日制高校は収入の約38%が私学助成なのに対し、通信制は約10%と格差がある。助成の拡充に取り組む事務局長の小椋龍郎さんは、「今や高校生の11人に1人が通信制に通っているにもかかわらず、昔と比べて助成は増えていない。通信制の役割の重要さや経済状況の厳しさに対する行政側の
学びリンク編集長の小林建太さんは、卒業生の進路について進学や就職以外の「その他」が3割に上ると指摘し「卒業後のサポート態勢の充実が必要だ」と話す。「学校に縛られず好きなことに時間を使える選択肢として広がるが、特に地方ではまだ認知度が低い。多様な学校があることを伝えていきたい」
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【関連リンク】学校に行かない選択をした子どもを取り巻く環境を取り上げた過去の連載「不登校の先に」はこちらから読めます。
なるほど!
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知りたい
私も今年の4月から、自由登校型通信制高校生になります。週3回登校する高校です。
私、学校では、やることが多すぎるし、みんなが早すぎて追いつけないしです。だから、すごく頑張っていたのですが、体が追いつけなくて、中2の途中から、行けなくなりました。
そこから、サポートルームに登校するようになりました。週3回を、目標に行っています。でも、それでも、とても疲れてしまって、絶対全日制高校には、絶対いけません。
ですから、通信制高校があって、本当に良かったです。まだ高校生きちんとやれるかなと思っていますが、全日制高校より、全然気楽です。自分のペースで、やれると思うだけで安心です。
高校生生活を通して少しでも社会で生きていけるようになりたいなと思っています。大学だろうが、就職だろうが、社会を出ての自分の居場所を見つけられる高校だと思っています。
何度でもいいますが、本当に感謝しています。まだ、理解されにくいですが、理解してくれる人もいます。ですから、全中学生の進路の一つに普通に検討されることを祈っています。
貴重なご経験談をお聞かせくださり、ありがとうございます。
通信制高校が一つの選択肢として中学生に伝わらりきらない背景には、親や教員がそもそも知らなかったり、偏見があったりと、さまざまな要因があるそうです。
自分のペースで学べる手段として、広がってほしいと私も思います。どうか高校生活、存分に楽しんでください。
これは良い記事だ。通信制様高校が増えることで救われる人が増える。
未だ文科省は登校日数に拘っているが、時代錯誤も甚だしい。随分前から進学したものの高校に馴染めず、退学を余儀なくされた生徒は問題になっていた。
高校に進学するのは99%近くの中学生である。その中には年間百日を超える欠席日数を数えていた生徒も決して少なくない(私の在職した高校では毎年受験生の10人前後)。
別の記事でも触れたが、不登校は再発例が極めて多い。本人達には失礼だが、最初から毎日登校するには難しい部分があるのだ。
登校しなくても必要な単位を取れば卒業証書が受け取れる高校が増えて欲しい。そしてミスマッチとなったとしても転校が容易にできるように制度を整えていかなくてはならない。
そして保護者が見栄を捨てて自分の子供の適性を理解することだな。自分のペースで勉強すれば良い。皆勤賞なんて偉くも何ともないのだから。
この流れが普通になって、将来の仕事も在宅と出勤が選べる社会になれば、生きずらい人が減って良いと思います。