〈パリ特派員の子育て通信〉幼稚園の給食、味には満足 でも育ち盛りには物足りない?

竹田佳彦 (2019年7月2日付 東京新聞朝刊に一部加筆)

パリ特派員の子育て通信

 2017年9月からフランスに駐在する東京新聞パリ支局の竹田佳彦記者(40)が、現地の子育てについてつづります。随時掲載。
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給食を再現してみたある日の夕食。やはり足りない気が…

 娘が通う幼稚園の給食を以前紹介しましたが、先日、親も一緒に食べる機会があり参加しました。参加した親は私を含めて12人で、母親8人と父親4人。時折娘が「食べなかった」と言うだけに、味や量が気になります。

 午前11時半に集まった親は、園舎3階の食堂へ。6、7人掛けのテーブルで、子どもたちに混ざって食べます。この日のメニューは、クリームチーズ一つに豚肉の蒸し焼き、カリフラワー、デザートはブルーベリー入りヨーグルトです。


<前回はこちら>ベビーカーでのお出掛けの「強敵」とは…


 友だちの親が来て一緒に食べることで、子どもたちはソワソワ。私が隣に座った娘は、なんだか嬉しそうでちょっと自慢げです。その私を、周りの子どもが指でつついてきたり、しきりに話し掛けてきたりと落ち着きません。豚肉を私に小さく切ってほしいと言うミラちゃん。ヨーグルトがべったりとついた容器のふたをテーブルになすり付けた後、そのテーブルをきれいに舐めるトマ君。同じようにふたでテーブルを汚したことが先生に見つかって、「自分で紙タオルを取ってきてきれいに拭きなさい」と叱られたリカちゃん。普段はもう少し静かなようですが、混乱ぶりにあらためて先生たちに感謝しました。

 さて、料理ですが、香草とニンニクバター風味の豚肉は塩分控えめでなかなか美味しいものでした。カリフラワーも、肉のうまみを吸って良い味です。知り合いのフランス人には「給食は美味しかった記憶がない」と聞いていましたが、ちゃんとした味で少し安心しました。もっとも、我が家は昔ながらの住民や比較的恵まれた家庭、とりわけ子育て世帯が多い15区にあります。パリ生活が長い妻のママ友の知り合いによると「15区は給食が美味しいらしいよ」とのことで、実際そのとおりなのかもしれません。

 ただ、気になったのは量です。パンは7、8センチほどのフランスパン一切れ、豚肉は5センチ四方くらいの一塊、付け合わせのカリフラワーは大さじ3杯程度。育ち盛りの子どもたちには物足りないように思えます。実際、夕方にはまちなかでチョコレート入りのパン「パン・オ・ショコラ」にかぶりついている帰宅途中の子どもをよく見かけます。

 望ましい食生活について、かつては「1日30品目」が目標、現在は「バランスの良い食事を心掛けるように」と言われていますが、食欲旺盛な娘を持つ父親としてはもう少し量を用意してほしいと感じました。もっとも、カリフラワーはお代わりができたようですが、誰も手を伸ばしていませんでした。

 皆が食べると、子どもたちは「ごちそうさま」と言う代わりに「手を上げて、頭に乗せて、お次は腰に…」という歌を皆で歌って給食の時間はおしまいです。

 大人たちは食事後、調理室の見学がありました。パリ市内では幼稚園内や隣接することが多い小学校内で調理するところがある一方で、外部のセントラルキッチンで調理したものを配達するところもあります。娘の通う幼稚園は小学校、中学校と隣接しているため、一括して敷地内でつくっていました。調理室のベテラン責任者、ローザさんによると、冷凍肉ではなく生肉を使い、野菜の下ごしらえなどに機械を使いながら、職員が調理しているそうです。冷蔵庫には翌日用の鶏肉が丸ごと入れられていました。これからさばいて料理に使うとのこと。ドレッシングも手作りとのことでした。

 見学後は、給食を食べた親からいろんな意見が飛び出しました。「パンが美味しくて驚いた」という声には「地域のパン屋11軒と契約を結んで納めてもらっている」。調理職員が足りているのかとの質問には「ストライキもあって人手確保が不安定になる面はある」との説明も。たしかに、幼稚園や学校によって「給食職員のストライキで食堂が休みになるため、お弁当を持ってきてください」と言われることがあります。急にお弁当をするのは大変ですが、実際に職員の顔を見て、仕事を知ることができた良い機会でした。

 ちなみに、給食費はパリ市の場合、両親の所得に応じ10段階に分かれ、わが家は1食当たり4.89ユーロ(約600円)。子どもと一緒に食べた親の給食代金は7ユーロ(約850円)でした。子どもよりは多かったのですが、やっぱり、もうちょっと量がほしかった。夕方、空腹にさいなまれながら仕事をするはめになりました。

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