大使館や沖縄知事に「お手紙大作戦」 生徒の真っすぐな声は社会を変える 元中学教諭が大人に伝えたいこと
中学生の素直な思いを手紙で
本は、11月に出版された「中学生の声を聴いて主権者を育てる」(高文研)。佐々木さんは今春、40年に及ぶ教員生活に区切りをつけた。退職して初めて、気付いたことがある。「損得勘定や駆け引きなしで、道理や真実を求める。真っすぐな中学生の声に、どれだけ自分が励まされてきたか」
本で紹介するのは、社会科の授業で仲間と実践してきた「主権者教育」の数々だ。そのために佐々木さんが思い付いたユニークな手法が、生徒からの「お手紙大作戦」だった。
大使館に質問の手紙を送ると、ガーナ大使やコスタリカ大使がわざわざ学校を訪れて講演してくれた。ドイツ大使館への生徒の訪問も実現。沖縄県の玉城デニー知事に手紙を書いたのがきっかけで、基地担当の県職員からオンラインで授業を受けることもできた。地元の上尾市長にさまざまな要望を書いて、自分たちの住む街の問題も考えた。
こうした交流が次々と実現したのは「中学生であることが『特権』だから」と佐々木さんは言う。「子どもの純粋な質問なので、ほとんどの相手は誠実に回答してくれる」。テーマこそ教員が設定するが、自力で調べて質問を考えるのは生徒だ。その過程で知識を増やし、考えを深めていく。
子どもが声を大人が共に実現
国政選挙の前には、各自の素朴な質問を各政党にぶつけた。政党からの回答をもとに「模擬投票」も実施した。「架空の政党では有権者としての実感がわきにくい」と考えたからだ。「偏りを心配されがちだが、生徒は与野党それぞれの回答を読んでから考えるので、政治的中立が保てる」
こうした授業を重ねると、子どもの「質問」が今の政治への「要望」でもあると痛感した。たとえば「コロナ対策」を質問する理由について、手紙には「仕事を失った人を助けてほしい」「若者や女性の自殺が増えているから」などと書かれていた。身近な人の痛みや苦しみへの共感から、問題意識を育んでいた。
日本の教育にも社会にも、問題は山積している。だが佐々木さんはあきらめていない。「未来の主人公である子どもが声を上げ、行動を起こすことで社会は変わると信じる。大人が一緒になって実現していかなければ」。本は書店やネットで注文できる。
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