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児童養護施設がLGBTの子を拒否「個室ない」「ほかの子に影響」

安藤恭子 (2018年10月14日付 東京新聞朝刊)
 全国の児童養護施設で、性的少数者(LGBT)の子どもの受け入れを拒むケースが起きていることが一般社団法人「レインボーフォスターケア」(さいたま市)の調査で分かった。受け入れ後、他の子どもへの影響を理由に、周囲にカミングアウトしないよう指導する例もあった。同法人は「自分の体を傷つけるほど苦しむ子もいる。本人が生きたい性を尊重してほしい」と改善を求めている。
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「施設には本人の思いを尊重した対応をしてほしい」と話す藤めぐみさん=東京都内で

「女子用の服しか選べず嫌」「集団のお風呂も苦痛」

 「施設で女子用の服しか選べないのが嫌だった。集団でお風呂に入るのも部屋での着替えも苦痛。裸を見られたくも、見たくもなかった」

 女児として施設で過ごした20代のAさんは、そこでの苦難を同法人代表の藤めぐみさん(44)にこう語ったという。Aさんは生まれた性と異なる性自認を持つトランスジェンダーで「男性寄り」と自認する。小学校低学年から性別に違和感があった。18歳で施設を退所後、性同一性障害と診断された。

 藤さんは「児童養護施設には、親の虐待や病気などさまざまな事情の子がやってくる。朝起きてから寝るまで集団行動が続く、いわば『毎日が修学旅行』。トランスジェンダーの子にとって、男女別の空間は枠にはめられるような辛さがあるだろう」と述べる。

受け入れ施設は45% 断る理由「個室ない」「知識ない」

 同法人が昨年まとめた全国の児童養護施設220カ所への先行調査で、LGBTとみられる子を受け入れた経験がある施設は99施設(45%)。着替えを見られるのをいやがる、制服のスカートを拒むといった事例が多く寄せられた。これを受け、施設や当事者児童の実態を探ったのが今回の調査だ。藤さんらが昨年8月~今年5月に35施設を訪ね、職員から話を聞いた。

 その結果、LGBTの傾向がある子の受け入れについて「個室がないので難しい」などとして断ると答えた施設が複数あった。中には「職員に知識がない。他の子への影響や、他の親に『そんな子と暮らしているのか』と思われないよう配慮した」と話す施設もあった。

受け入れ後の不適切対応も…「オープンにするのはやめよう」

 受け入れ後の対応に問題があるケースも。ある施設では「女の子になりたい」と男の子から告白があり、職員で議論した結果、「みんなが理解できるものではない、と伝えることが大事」と結論づけた。本人には「個人で楽しむのは良いけれど、オープンにするのはやめよう」と周りに言わないよう伝えたという。

 生理が嫌で、ホルモン治療を受けたいと職員に訴えたが、認められなかった女の子の事例もあった。「苦しい」「生きている価値がない」と手紙を書き、所在が一時分からなくなった。

 出生時の性は女性で、性別適合手術を受けて今は男性として暮らす、中国地方の30代の元施設職員は「世間で言う、いわゆる男らしさ、女らしさを求めず、1人の人間として尊重されることが大切」と語る。

 「自分がカミングアウトした時は、子どもの方が柔軟に受け止めてくれた」と振り返る。「施設の子は家庭に帰れず、その施設から見捨てられたくないので、トラブルを起こさずに無難にやり過ごそうと考えがちだ。でも、偏見や差別、いじめはいけないということも含め、いろいろな人がいる、いてもいいということを職員が説明し、態度に示せば、他の子も理解することができる」と話す。

個室の整備など急務 「理解している」と伝えて

 藤さんは「LGBTの傾向がある子を受け入れる環境を地域で早急に整え、行き場を確保するべきだ。男女別ではなく男女混合の生活への見直しや、個室を用意するハード整備は他の子にも必要なことではないか」と提案する。

 「子どもを傷つけまいとする職員の言動が、結果的に『自分は隠されないといけない存在』と、誤ったメッセージを与えてしまうこともある。子どもには『自分はあなたを理解している』と伝えてほしい」