児童養護施設を地域に開いた千葉・実籾パークサイド 目指すのは「いつでも帰れる場所」 高齢者や障害者の施設も

満開の桜の下、グループホームのお年寄りと一緒に花見を楽しむ児童養護施設の子どもたち=4月上旬、千葉県習志野市で
同じ敷地内で暮らすお年寄りと共に
4月上旬、青空に満開の桜が咲き誇る公園で、車いすなどのグループホーム利用者に、おにぎりやお茶、卵焼きと唐揚げのおかずを手渡す児童養護施設の子どもたちがいた。開所から約1カ月。まだ会話は少ないが、桜の下で一緒にランチを楽しむ。核家族で育ったためか、お年寄りに慣れない子もいるが、指導員の女性は「一緒に暮らすのが当たり前の風景にしたい」と話した。
公園に隣接した約6100平方メートルの敷地内には誰でも使えるバスケットボールのコートがあり、放課後は近所の子どもたちでにぎわっていた。6人がそれぞれの個室で暮らす2階建ての住宅6棟から成る児童養護施設にフェンスなどはない。子どものショートステイや一時保護所、子どもや家庭に関する相談を受ける専門機関・児童家庭支援センターなどを併設。18歳を超えて施設を出た後に泊まりに来られる建物もある。プライバシーを確保しながら、地域社会の目が入ることで子どもの安全を守る狙いという。
高齢者向けサービスでは他に、看護と介護を一体的に泊まりや通いなどで行う看護小規模多機能型居宅介護なども提供する。障害福祉では農業関連の就労継続支援B型事業所も開設予定。運営する社会福祉法人の福祉楽団(千葉市)は「高齢者の臨終と子どもの育ちがクロスするように(施設を)配置した」という。
スマホOK「失敗する権利」を保障
施設長の藤堂智典さん(49)は県内の児童相談所などで21年間勤務し、一時保護所の定員超過など受け皿不足の問題点を痛感。家庭的な環境づくりのため進む児童養護施設の小規模化も、施設の不足に拍車をかけていた。
伴走的な関わりを実践してきた同法人を見込んで施設開設を持ちかけ、2021年に転職。用地探しから取り組んだ。
「支援が必要な子どもや高齢者が別々にいるのではなく、多世代で多様な人が一緒に暮らすのが大切」と藤堂さん。「いろいろな困り事を抱えた人たちのニーズに応えられる、包括的な相談支援を日常的にできるようにしたい」と意気込む。
施設では、子どもが習い事や部活に取り組む環境を用意し、中高生はスマホ所持も可能。「同世代の子が皆使う中で、誘惑など危険があるからと禁止するのがいいのか。支援がある環境で『失敗する権利』を保障したい」と藤堂さん。
上智大の鏑木奈津子准教授(社会福祉)は「多様な世代や状態の人たちが開かれた空間で暮らすことにより、支えられる側が時には支える側になる機会も生まれ、役割の創出や自尊感情の回復にも寄与することが期待できる」と指摘。「地域の人たちがあまり交流のなかった認知症高齢者や障害者と同じ住民として出会う経験は、偏見や分断の解消につながり、地域共生社会の推進につながる」と話している。
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