新学期迎える子どもたちに「大丈夫だよ」 人形劇「9月0日の大冒険」横浜で上演

杉戸祐子 (2019年8月21日付 東京新聞朝刊)
 学校の夏休みも残りわずか。川崎市中原区を拠点とする「人形劇団ひとみ座」が22日から、夏休み最後の夜に大冒険に挑んだ小学生の物語「9月0日大冒険」を新作として、横浜市中区で上演する。メンバーは「新学期に向けて『大丈夫だよ』と子どもたちの背中を押してくれるストーリー。家族で楽しんでほしい」と願う。

公演に向けた稽古の様子=川崎市中原区で

引っ込み思案な少年が、異世界で同級生と友情はぐくむ

 原作は1989年に児童文学作家のさとうまきこさんが著した同名の小説(偕成社刊)。主人公の少年・純が、楽しい思い出のないまま過ごした夏休みの最後の夜、不思議な日めくりカレンダーに誘われて「9月0日」に迷い込む。そこは恐竜が生きる白亜紀で、同級生の理子、明と一緒に冒険を繰り広げる。

 「引っ込み思案な主人公が冒険を通し、他の2人と通じ合い、時にはけんかして自分をさらけ出しながら友情を育む。見る人にも、人が人と関わりながら成長していく体験をしてもらえたら」と、演出を担う劇団代表の中村孝男さん(53)。舞台化を発案した制作部の石井セリさん(35)は「原作は30年前の作品だが現代の小学生の気持ちに寄り添える物語」と話す。

1948年創立の「ひとみ座」 迫力のパペット恐竜使い

 人形の使い手が体長60センチほどの子どもの人形を操りながら、せりふを語り、話を進めていく。「人形の表情は変わらないが、目に見えない気持ちを観客が想像力で構築し、共有していくところが人形劇の魅力」と中村さんは語る。「多くの人が舞台で一緒に一つのエネルギーを生み出している」というメッセージを伝えるため、使い手の動きは観客席から見える。ティラノサウルス、プテラノドンなど、パペット恐竜の迫力も見どころの一つだ。

 ひとみ座は48年の創立以来、神奈川県内外の幼稚園や保育園、小中学校などで公演を続けてきた。現在も約60人の劇団員が所属している。70年を超える歩みを中村さんは「一瞬一瞬を誠実に演じることの積み重ね」と振り返り、「テレビやインターネットで何でも見られる時代だからこそ、舞台で人が演じ、皆で一緒に見る良さを大切にしたい」と思いを込める。

 8月22、23、25日にJR桜木町駅近くの県民共済みらいホール。いずれも午前11時と午後2時の回がある。22日は完売、23日は両回とも残席わずか。全席指定、前売り大人2600円、4歳以上中学生以下2000円。当日券は各400円増し。問い合わせは同劇団=電話044(777)2225=へ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年8月21日