実施率100%!江東区の工夫 保育士の職員が現場経験を生かして質向上
待機児童対策で保育所が増える→東京都「検査に手が回らない」
保育所の安全性や、保育士の子どもへの接し方など、保育の「質」を確認するのが、行政の実地検査です。待機児童対策で、都市部では保育所が急増する中、全施設に入るために検査方法を工夫したり、元園長が施設を回って助言する「巡回指導」で気になる点が見つかった場合に検査につなげたりする自治体もあります。
まず、認可保育所の最近の増え方を見てみましょう。待機児童の多い東京都では2010年代に入り、年約50施設ずつ増え、2014年には約100施設増えて1993施設に。2017、18年は、毎年新たに200施設以上が開設され、今年4月時点で2765施設に上ります。認可保育所はかつて、公立か社会福祉法人への委託が中心でしたが、現在は株式会社やNPO法人なども設置できます。東京都の担当者は「新しくできた保育所を優先して検査しているが、手が回らない」と話しています。
江東区の担当職員は8人中7人が保育士
こうした中、東京すくすく編集チームが調べた実地検査の実施率で100%の江東区は、検査方法を工夫しています。担当職員8人のうち7人が保育士で、現場での経験をふまえ、「保育の質を担保するためには全施設に年1回は入るべきだ」との考えで検査要綱をつくりました。
限られた人数でベビーホテルなどの認可外施設を除く約180施設をみるために、3つある検査項目を分けて、
①子どもの安全に直結する「運営管理」と「保育内容」を重点的にみる検査
②その2項目に「会計経理」を含めた3項目すべてをみる検査
の2種類にしました。保育の質に特化した①の検査は全施設に毎年1回は行い、②は3年に1回程度にすることで、効率化しています。
手応え上々「施設側の『保育の質』への意識が高まります」
担当者は「身近な区が定期的に入ることで、施設側の安全や保育の質への意識が高まります。施設は増えましたが、改善点を指摘する数はぐっと減っています」と手応えを感じています。
また、世田谷区などは元園長らが施設を回って現場の保育士に助言する巡回指導を行い、問題点があれば検査部署と共有しています。さいたま市は、全施設に事故の起きやすい昼寝時間に立ち入っていました。
2015年に施行された子ども・子育て支援法により、市町村や東京23区も検査に入れることになったため、各自治体も徐々に態勢を整えており、実施率は改善してきています。
運営管理 | ・施設長や保育士、調理員などを必要人数置いているか ・施設の温度、湿度、換気、採光、音などの環境は適切か ・不審者の侵入防止や救命措置など必要な安全対策をしているか |
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保育内容 | ・子ども一人一人の人格を尊重した保育をしているか ・保育方針や目標に基づいた計画を作成しているか ・食物アレルギーへの対応は適切か ・虐待の早期発見のために子どもの心身の状態を観察しているか ・睡眠中の事故防止対策をしているか |
会計経理 | ・不必要な支出はないか |
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