【新聞記者ラジオ】「子どもたちにせめてもう1人保育士を」出版記念 執筆した記者3人が語る「配置基準」のおかしさ
保育士の「配置基準」
保育士配置の国の最低基準は、保育士1人で0歳児は3人、1・2歳児は6人、3歳児は20人、4・5歳児は30人を受け持てることになっています。特に4・5歳児の基準は1948年から変わらず、国際的にも低いままです。
最低レベルの配置基準…保育現場は
本の第1部では、この最低レベルの配置基準によって疲弊する保育現場の状況を、第2部では、保育制度の変遷や国際比較をまとめています。コロナ禍における登園自粛では、登園する園児の数が減りました。その際に余裕ある保育ができたことで、この配置基準のおかしさに気づいたという愛知県の保育士らが始めたキャンペーン「子どもたちにもう1人保育士を!」の動きも紹介しています。
朝日新聞、毎日新聞、東京新聞の記者が、新聞社の垣根を越えて各章を担当しています。128ページ、税込み1540円。詳しくは、こちらで案内しています。
朝日新聞記者と語る「保育」問題 ポッドキャストで執筆の裏側を公開
前後編の2回のうち、前編では「保育士の配置基準ってそもそも何?」というテーマについて話しました。
中井記者 原稿に書くときにも、「配置基準って、どう書いたらわかりやすいかな」と悩みながらです。0歳児は保育士1人あたり3人まで、1・2歳児は6人、3歳児は20人、4・5歳児は30人…。実際に自分の目の前に小さい子どもたちがいるのを想像してもらうと、「1人で3人って無理じゃない?」と、肌感覚としておかしさを感じてもらえるのではないかな、と。できるだけイメージしやすいように書いています。
奥野記者 特に「4、5歳児30人を保育士1人で見られる」という基準は、昭和23(1948)年から70年以上変わっていません。最低基準なので、実態として基準より多く人を置いている保育園が多いのですが、最低基準の人数しか人を配置できない保育園もある。4・5歳児だとまだ手が掛かる子もいるので、30人を1人で見る基準は異常だと思います。
田渕記者 大前提として、「忙しいとか、人が足りないから虐待をしてしまう」というのは許容してはいけないと思います。ただ、家庭に置き換えると分かると思いますが、「忙しい」「人が足りない」というのは虐待が起こりやすい環境です。保育園も同じで、その土台を決定づけているのは配置基準。配置基準の問題と虐待が直接関係あるとは言いたくないですけれど、土台として、要因としては、大きく関係するのではないかと思って記事を書いています。
※「新聞記者ラジオ」のポッドキャストで聞くことができます。
ポッドキャスト後編は2月21日に公開
2月21日に公開予定のポッドキャスト後編では、保育士の配置基準の改善が求められる理由を、取材の経験なども交えて語り合いました。公開に先立ち、一部を紹介します。
奥野記者 OECD(経済協力開発機構)による国際調査では、保育園1園あたりの園児数の平均が日本は116人。対してノルウェーは40人台です。また、日本は1園の規模が大きいだけでなく、保育士1人が見る園児数が多い。いろんな意味で最低基準だと分かってきました。
田渕記者 配置基準の改善が必要なのは、それが子どもの権利だから。現状は国際的にも極めて低い基準です。「良質な保育にお金をかけることで、子どもの発達に対していい影響がある」といったデータが、国として保育の質の部分にはお金をかけるべき理由の1つとしてあります。
中井記者 保育士ら保育に関わる当事者らから見ると、園によって保育士の配置を手厚くしているかどうかに差があり、「目が足りていない」と感じる保育園では子どもが不安定になっているケースもありました。誰もが、どの保育園に行っても、安心して保育を受けられるようにしたいです。
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