〈坂本美雨さんの子育て日記〉82・コム、ありがとう 友達になれて本当によかった
友達の猫「コムタン」が亡くなった
友達の猫が亡くなった。友達が飼っていた猫、でもあるが、私の猫の友達、という意味でもある。コムタンスープから名をとられた、栄養豊かそうで福々しい、白いスコティッシュフォールドのコムタンとは、友達だった、と私は思っている。
コムタンの家族のめぐちゃんと知り合ったのは12年ほど前だろうか。飼い主と飼い猫という関係を超えてパートナーだったふたりは、当時ふたり暮らし。共通の友達が「立ちあがる猫がいる」と写真を見せてくれたのがきっかけで、「このいきものはなに…? すぐに会わせて!」とお願いして、いきなり家に押しかけた。初めて会ったコムタンは、鏡餅のようにふくよかな体でスッと立ち、まんまるな目でめぐちゃんを見つめていた。
一目見て、コムタンの魅力のとりこになった。コーヒーをこぼしたあとのようなアゴのしみ…じゃなくて模様。ペラッとした耳。なにより穏やかで人懐こい性格。私のネコ吸い(猫に顔を埋めて息を吸う行為)がしつこい時にだけ、いいかげんにせいよ!と鉄拳が飛んでくるが、「コムがそんなことするの美雨ちゃんにだけ」とめぐちゃんが言うので、私が完全に悪かった、ごめんコム。
めぐちゃんと私は他の数名のネコ仲間たちと「ネコ親戚」と呼び合い、出張の際にはネコのお世話をし合い、家族ぐるみの付き合いを深めていった。
子どもたちとも一緒に歳を重ねて…
数年がたち、彼女とコムに人間の家族ができた。コムの弟だからセコムね、と勝手に決めたのがあだ名として定着した。コムはセコムをよく見守り、寝つかせ、泣いていればすぐに飛んでいき、一緒におやつを食べ、仲むつまじく歳(とし)を重ねていった。
セコムが生まれて1年後、私にも人間の家族が生まれ、セコムとうちの娘は幼なじみに。2人はしょっちゅう一緒に遊び、ケンカし、爆笑し、そのなかにいつもコムがいた。2人が作ったレゴの町の中央に鎮座しにいくコム。宿題ノートの上に寝そべって、どいてよ!と邪魔がられるコム。眠る前の絵本を一緒に読むコム。ドミノを並べてるところを通って倒しちゃうコム。どれも忘れられないシーン。
たまに家でコムとふたりきりになるときは、達観した目で話を聞いてくれ、しんどい時はふかふかのおなかで受け止めてくれた。そんなコムは、最期までめぐちゃんとセコムと心を通わせ、幸せに天寿を全うする姿を見せてくれた。コム、ありがとう。コムと友達になれて、本当によかった。
坂本美雨(さかもと・みう)
ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。
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