〈坂本美雨さんの子育て日記〉82・コム、ありがとう 友達になれて本当によかった

(2024年8月28日付 東京新聞朝刊)

毎年、クリスマスもお正月もお誕生日も一緒だったコム

友達の猫「コムタン」が亡くなった

 友達の猫が亡くなった。友達が飼っていた猫、でもあるが、私の猫の友達、という意味でもある。コムタンスープから名をとられた、栄養豊かそうで福々しい、白いスコティッシュフォールドのコムタンとは、友達だった、と私は思っている。

 コムタンの家族のめぐちゃんと知り合ったのは12年ほど前だろうか。飼い主と飼い猫という関係を超えてパートナーだったふたりは、当時ふたり暮らし。共通の友達が「立ちあがる猫がいる」と写真を見せてくれたのがきっかけで、「このいきものはなに…? すぐに会わせて!」とお願いして、いきなり家に押しかけた。初めて会ったコムタンは、鏡餅のようにふくよかな体でスッと立ち、まんまるな目でめぐちゃんを見つめていた。

 一目見て、コムタンの魅力のとりこになった。コーヒーをこぼしたあとのようなアゴのしみ…じゃなくて模様。ペラッとした耳。なにより穏やかで人懐こい性格。私のネコ吸い(猫に顔を埋めて息を吸う行為)がしつこい時にだけ、いいかげんにせいよ!と鉄拳が飛んでくるが、「コムがそんなことするの美雨ちゃんにだけ」とめぐちゃんが言うので、私が完全に悪かった、ごめんコム。

 めぐちゃんと私は他の数名のネコ仲間たちと「ネコ親戚」と呼び合い、出張の際にはネコのお世話をし合い、家族ぐるみの付き合いを深めていった。

子どもたちとも一緒に歳を重ねて…

 数年がたち、彼女とコムに人間の家族ができた。コムの弟だからセコムね、と勝手に決めたのがあだ名として定着した。コムはセコムをよく見守り、寝つかせ、泣いていればすぐに飛んでいき、一緒におやつを食べ、仲むつまじく歳(とし)を重ねていった。

 セコムが生まれて1年後、私にも人間の家族が生まれ、セコムとうちの娘は幼なじみに。2人はしょっちゅう一緒に遊び、ケンカし、爆笑し、そのなかにいつもコムがいた。2人が作ったレゴの町の中央に鎮座しにいくコム。宿題ノートの上に寝そべって、どいてよ!と邪魔がられるコム。眠る前の絵本を一緒に読むコム。ドミノを並べてるところを通って倒しちゃうコム。どれも忘れられないシーン。

 たまに家でコムとふたりきりになるときは、達観した目で話を聞いてくれ、しんどい時はふかふかのおなかで受け止めてくれた。そんなコムは、最期までめぐちゃんとセコムと心を通わせ、幸せに天寿を全うする姿を見せてくれた。コム、ありがとう。コムと友達になれて、本当によかった。

坂本美雨(さかもと・みう)

 ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。

コメント

  • 美雨さんとネコ親戚さんの関係ってすごくいいなと、猫吸いの本を読んだ時に思いましたが、それぞれにお子さんが産まれた後もこんなに素晴らしいやりとりが続いていたんですね。人間のお友達と同じように猫さんと会話
    なほ 女性 50代 
  • コムちゃんサバちゃんのおかげで、保護猫ちゃんのイベントにもいき、かぞくを迎えました。 かわいいふたりとそのご家族やおともだちのみなさんに、いろんなことを教えていただきました。 ありがとうございまし
    りえ 女性 40代