〈坂本美雨さんの子育て日記〉77・私たちができることは、声を上げ続けること

(2024年2月21日付 東京新聞朝刊)
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仲良く見えますが、チューをかたくなに拒まれています

坂本美雨さんの子育て日記

「全ての人に生きる権利がある」どうかこれ以上…

 もう4カ月、ガザの虐殺が続いている。イスラエルによるパレスチナの人々の民族浄化が遂行されている。ホロコーストがリアルタイムで、目の前で起こっていて、数年後私たちは「なぜ誰も止めなかったの?」と責められるだろう。子どもにこのままの世界を残すのだろうか。娘に「なにもしなかった」と思われるのか。それだけはいやだ。

 私たちができることは、声を上げ続けること。もちろん最初は不慣れで、でも非常事態なのだから手探りで当たり前だ。SNSで発信をすること、メールで政府に声を届けること。娘と一緒にデモに行くこともある。イスラエルを支援する企業をボイコットすることも効果的だ。

 私たちのお金で人を殺す武器を買ってほしくないからだよと説明すると、娘もちゃんとわかってくれた。ボイコットしているお店が閉店した時、「もうイスラエルにお金あげるのやめようっていうことにしたんじゃない?」と言ったので胸が詰まった。実際は工事のためで、そうだといいね、としか答えられなかった。

 ガザの人々は美しい故郷も、紡ぎあげたささやかな暮らしも将来の夢も、全て奪われた。これまで殺された推定3万人のうち、1万3000人以上が子どもだ。イスラエル軍は、家を追われた140万人を唯一の安全地帯とされた最南端ラファに追い詰めてから、集中的に爆撃した。増え続ける死者数のひとりひとりを想像すると気がおかしくなりそうになる。

 車中で親族5人を射殺され最後のSOS電話をした6歳のヒンドちゃんは、10日後に遺体で発見された。壁から下半身がちぎれた状態でぶら下がっていたのはシドラちゃん、7歳の女の子だった。自分の娘と同じように愛され続けるはずだった子どもたち。ひとりひとりに名前と日常と愛する人と未来があったことを本気で想像し、刻んでおきたい。

 壊滅させられたハンユニスに住んでいた友達アハメッドの夢は世界を旅することで、いつか東京で会おうと約束をした。毎日彼の無事を確認しホッとするが、ある時「もし神が私のために死を選ぶなら、私を許し、祈ってほしい」と書いてきた。ありきたりな言葉しか見つからず、どうか生き延びてほしい、あなたは生きなくちゃいけない人だと送ると、「全員がそうだよ、全ての人に生きる権利があるよ」と返ってきた。

 どうかもう殺さないで! 停戦を!!

 今、もっと声を合わせたい。

坂本美雨(さかもと・みう)

 ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。

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  • シベリア says:

    どうか未来が。
    子供たちための未来が。
    健やかな世界でなければいけないのに。
    両隣で聞こえる、小さな寝息を聞きながら拝読しました。涙が出ます。

    シベリア 女性 30代

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