教育虐待につながる”3つの言葉”使っていませんか 強まる中学受験の重圧 親が子どもを追いつめる

(2019年11月18日付東京新聞朝刊に一部加筆)
子育て世代がつながる
 子どもに度を超えた勉強をさせる「教育虐待」。「ルポ 教育虐待-毒親と追いつめられる子どもたち」の著者で、教育ジャーナリストのおおたとしまささん(46)は、中学受験を舞台に親が子どもに勉強を強いることがあると言います。教育虐待をしているかもしれない、しそうだと思う親はどうすればいいのでしょうか。気づくポイントと子どもへの向き合い方を聞きました。
教育ジャーナリストのおおたとしまささん

教育ジャーナリストのおおたとしまささん

特集・変わりたいあなたのために

「中学受験は親の受験」…親へのプレッシャーが強まっている

-教育虐待とはどんな状態でしょうか。

 子どもが受け入れられる限度を超えているのに、たたいたり、暴言を放ったり、無視したりなどの精神的、肉体的な苦痛を与えて勉強させることを「教育虐待」と呼んでいます。親が受験や進学について子ども本人の意思を無視したり、軽視していることが前提にあります。「ここからは教育虐待」という線引きをしたら、そこまではやっていいということになってしまうので、明確な基準はありません。

 近年は、特に中学受験で「親の受験である」「親が頑張らないとダメ」などと言われるようになり、親へのプレッシャーが強まっています。「子どもの成績が悪いのは私のせい」と思い詰めている親も多い。先行きの不透明さが増す中、親が「大丈夫?本当にそれで大丈夫?」と、子どもに不安を投影しているように見えます。中学受験での教育虐待が増えているとすれば、そのせいだと思います。

子どもへのイライラは、親が自分の未熟さに気づくチャンス

-自覚のない親も多いと思います。親自身が気づくポイントはありますか。

 子どもを見ていれば、SOSを発していますよ。5時間勉強をしても大丈夫な子もいれば、1時間でも苦しくなる子がいます。

 具体的には、過酷な受験勉強の中でも子どもが元気かどうかを見ることです。1日の勉強が終わった時に「ああ、終わったぁ~」という達成感を味わえているか。苦しくても、充実していれば目は輝きます。目に力が無いのはまずいですね。

 そもそも、親が子どもに対してイライラしたり、モヤモヤしたりするのは、親が子どもに対して「こうあるべき」「こうなってほしい」と求めるばかりで、子どもを1人の人間として尊重する意識が低いからです。

 イライラを解消したい時は、子どもを変えようとするのではなくて、自分を変えるべきです。今の子どもの振るまい、成績はそのままだとして、自分の中のイライラやモヤモヤを解消するにはどうしたらいいかを考えてみてください。結局のところ、親自身が自分の中の未熟さに気づき、向き合うしかないのです。そうやって親は、親として成長するのだと思います。

 もちろん、教育虐待の自覚があり、「止められない」という場合は、児童相談所に相談したり、専門の心理カウンセラーに頼ることも大切です。教育虐待は子どもの人権侵害ですから、一刻も早くやめるべきです。第一志望の学校に入ってもチャラにはなりません。子どもにとっては一生残る傷なのです。

「あなたのため」「いい教育を」「選択肢を増やしてあげたい」

-なぜ、子どもに過度に求めてしまうのでしょう。

 理由は複合的だと思います。親自身が「これが正解」という教育を受けてきたので、子育てにも正解があると思ってしまう。情報をいっぱい集めて、その「正解」に子どもを合わせなくてはと思ってしまうのです。親自身が幼いころに「あなたはダメだ」と言われ続けて育ち、自己否定するくせがついていると、それを子どもに投影してしまう場合もあるでしょう。

 「あなたのため」「いい教育を受けさせたい」「選択肢を増やしてあげたい」という言葉を日常的に使っていませんか。そういう人には気をつけてほしいな、と思います。

 「いい教育」と言っているのは、どんな教育なのでしょう。「いい教育を受けさせるために受験させる」などと言う人がいます。でも、偏差値の差や学校の違いだけが教育の質にかかわるわけではありません。親の窮屈な人生観によって、子どもを追い詰めてしまうことを自覚する必要があります。

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おおたとしまささんの著書「ルポ 教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち」

 「選択肢を増やす」というのも要注意です。「選択肢を広げるために東大にいかせたい」と言う親にも出会ってきましたが、そうでしょうか。「頑張って東大に入ったのだから、年収のいい職業に」「社会的地位の高い仕事を」と、結局、限られた範囲の中から将来を決めつけてしまう場合が多いと思います。

感情的になる=「溺れている」 いったん落ち着いてみよう 

-おおたさんもお子さんがいますが、イライラしないのでしょうか。

 感情的になって怒ってしまう時はありますよ。そういう時は、「自分は今、溺れている」と思うことにしています。溺れている時は、口を閉じて、手足をばたつかせるのをやめますよね。いったんフリーズする。少しでも間を置きましょう。

 あと、抽象的な言い方になりますが、教育虐待をしてしまっている、と思ったら、子どものふがいなく見える部分も含め、ありのままの子どもを愛おしいと思う気持ちを思いだしてほしい。「お勉強がよくできる、よその子と交換しますか」と言われたら、嫌ですよね。

 子どもに「どんなあなたでも、私にとってはかけがえのない存在。ダメなところも含めてあなたのことを愛している」と伝え、安心感を与えてほしい。親だって不完全なのですから。安心感がある時に子どもは一番のパフォーマンスを発揮します。

-配偶者が教育虐待をしている場合はどうすればいいでしょうか。

 もし、目の前で教育虐待が行われていたら、僕は「それは傷つけすぎている」「もう止めて」と言って、子どもの前に立ち、盾になるべきだと思います。深刻な場合は、児童相談所など専門機関に相談することも必要でしょう。

 微妙だなという時でも、少なくとも子どもにとっての安全地帯になってあげてください。子どもがつらそうにしていると思ったら、まずは一緒にいて話を聞いてあげたり、楽しい時間を過ごしたりして様子を見ます。

親が教えるべきことは?「すべての人の人生に価値がある」

-親にとっては子どもの教育はどうしても悩んでしまうテーマです。今、悩んでいる親にメッセージを。

 受験など子どもの人生の重大な出来事を前に、最初から適切に接することができる親なんてなかなかいません。傷つけたかもしれないと思ったら、自分の未熟さに向き合い、そこから一歩ずつ親として成長する心意気が大事だと思います。

 教育虐待をしてしまう人たちは、「こうして生きていかなければ」という不安が強い傾向があると感じています。むしろ、親がすべきことは、どんな学歴でもどんな職業でも、すべての人の人生がかけがえのないもので、価値のあるものだと教えることでしょう。親自身が自分の人生に誇りを持ち、自由に生きられたら、子どもに強いることもなくなっていくのではないかと思います。

教育虐待とは

 厚生労働省によると、教育のためという理由でも言葉での脅しや無視、きょうだい間での差別的扱いは「心理的虐待」にあたる可能性がある。おおたとしまささんの著書「ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち」(ディスカヴァー携書)には、子どもへの影響などが詳しく書かれている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2019年11月18日

11月は児童虐待防止推進月間。虐待を防ぐため、親子を支えたり助言したりする人々から、子育てに奮闘する親たちへのメッセージを〈特集 変わりたいあなたのために〉として随時掲載します。

すくすくボイス

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コメント

  • 匿名 より:

    13歳男です。自分は1時間も苦しく他のことを考えてしまうような人で定期考査ではものすごく低い点数を取ってきて親には「なんでそんなんなん」とか「お前はアホだな」とかいろいろありまして自分はなんとか頑張っているのに言われてしまい毎日勉強が足らないと言われ勉強しても同じようなことを言われつづけられなにをしても怒られやる気も全くでなくなりました。
    あと自分が「こんなやり方してみていい?」と聞いたら「お前そんなんで成功したことあんのか?」とキレられ怒られ父は「とりあえず覚えろや」と言われ自分でもどうしたらいいのか認めてもらえるのか?と考えてしまいます。
    そして自分の物を全部取られ「お前は一生ゲームすんな」と言われ何もできなくなり自分を殴ったりして自分のストレス:イライラを解消していますが体がもうボロボロで学校にも辛くなって勉強もしたくなくなりまた定期テストの点数が下がりまた怒られの悪循環でもう自分が自分じゃなくなってしまいそうです。

  • 匿名 より:

    25歳・女です。5時間勉強しても平気タイプでしたが、中学受験を経験しました。
    今になって別の側面から「毒親だな」と思い関連事案を調べるようになりました。
    他投稿者さんも仰ってるような教育虐待含め、子に対して「こうなってほしい」と思うこと自体が傲慢では?と感じるんですよね。だって別の「人間」なんですよ。元気に育ってくれるといいな、苦しみの少ない人生を送ってくれるといいな、以上の願いはなんかもう本当に傲慢!
    スポーツを「させたい」と習わせるのも引っかかります。「経験させてあげたい」でしょ。
    「子にこうさせたい」「子をこうしたい」という考え方が危険です。考えてほしいです。

  • 匿名 より:

    教育虐待、してますね。世間が順位を競わせるでしょう?負けたくない。1番が好き。私もずっと成績が良かったから子供にもそうあってほしい。ポテンシャルが無い子では無いので、期待してしまいます。
    それに、競争社会に負けて引きこもりの大人になってほしくない。40にも50にもなって、引きこもって自立できないで生きている人の人生も、様々な理由はあるでしょうけど、価値がある!と胸を張って言えますか?
    教育虐待と言われようががっつり教育して、ストレス耐性を強くして、社会に放り込みたいです。だから教育虐待を止めきれません。

  • 匿名 より:

    一般的な教育虐待とは少し違うかもしれませんが…私の場合は東大卒の父からでした。受験に関係なく点数が悪ければ当然締め上げられますが、満点でも「俺の方が優秀だ!」と怒鳴られるのです。どう転んでも暴行を受ける魔女裁判で育ちました。成績だけならともかく、教科書のカリキュラムの掲載順や、教科書のフォントが気に入らないなどのことも全てお前が悪いのだと2時間3時間怒鳴り続ける元気な父でした。他にはテレビで株の天才少年の放送を見たら、急に「何故お前は株で大儲け出来ないんだ」と3時間の説教など、どこに地雷があるか常に怯える日々でした。少しでも反抗しようものなら合気道黒帯の腕前を存分に発揮して折檻です。生活費、学費という必殺技もありました。
    そしてとうとう高校の時にテスト時になると冷や汗と動悸で頭が真っ白になってしまう身体症状が出るようになりました。
    なんとか滑り止めの私学へ入りましたが、強気な態度の人に必要以上に怯える一方、コミュニケーション方法を暴言しか知らないので自分が人を害しそうで関わるのが怖く、苦労しました。
    化粧やスカート禁止、学校以外の外出禁止、勉強机から動くの禁止、友人を持つの禁止、異性と関わるの禁止、肌着の洗濯禁止…。大学ではありとあらゆる禁止から逃れるため、私の所有権を親から他人へ譲渡することだけ考えて生きるようになりました。その唯一の方法は結婚です。とにかく婚活市場価値を上げることを目指し、25歳の時にお見合いで現在の夫と結婚しました。過去の恐怖に悩まされることもありますが、夫には怒鳴られることなく平凡に暮らしています。今は1歳と3歳の子供がおります。子供へ虐待の連鎖をしないよう気をつけるばかりです…。

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