杉浦太陽さん×産後クライシス(1)妻と子どものため、男のプライドは玄関に置いてくる

写真 杉浦太陽さん「男のプライドは玄関に置いてくる」

Q1.杉浦さんは「産後クライシス」ありましたか?

 子育て世代が気になるテーマを楽しく学べる「東京すくすくオンライン講座」。今回は、子どもの誕生後に夫婦仲が急速に悪化する「産後クライシス」がテーマです。

 ゲストは4児のパパである俳優・タレントの杉浦太陽さん(40)。2007年に結婚した元モーニング娘。の妻・辻希美さん(34)とともに、中2の娘、小5・小3・3歳の息子という4人の子どもを育てています。

 読者の皆さんから寄せられた夫婦関係の悩みを、2人の記者がぶつけ、夫婦の危機の乗り越え方を一緒に考えました。

子ども優先で、お互いを見なくなった

今川綾音記者 それでは、さっそく最初の質問です。出産直後に夫婦仲が急速に悪化するという「産後クライシス」。杉浦さんはご存じでしたか?

杉浦太陽さん これって、昔はなかった言葉ですよね。「産後うつ」とは違うんですか?

今川 そうですね。産後うつは、産後、子育てしながら、ホルモンの影響もあって気分が沈みがちになってしまう状態を指します。

杉浦さん メンタルが沈んじゃう。

今川 はい。一方、産後クライシスは、夫婦関係のことを指しています。お子さんが誕生した直後にすれ違いが生じてしまう、という現象を指しています。杉浦さんご夫婦はいかがでしたか?

杉浦さん うちもありましたよ。当時はまだ、産後クライシスという言葉はなかったんですけれど。1人目の時がやっぱり一番大変でした。仕事でも何でも、初めてスタートすることは大変で、パパママ1年生も同じ。それまでカップルだった2人に子どもができて3人の家族になった時に、どの方向を見て接していけばいいのか。僕はすごく悩みました。

写真 夫婦関係について話す杉浦太陽さん

 子どもはかわいいから、お父さんもお母さんも、子どもばかり見て、お互いを見なくなってしまう。特に初めての子だと、「何をやってあげたらいいのかな」「この子が一番大事」と、子どもが優先になってしまう。子どもを大事にする気持ちはもちろん必要ですが、「大事な子どもは誰と一緒に育てるのか」ということを、もう1回見つめ直さなければいけません。

妻から「なんで私には一言もないの?」

杉浦さん 例えば、うちはこんなことがありました。まだ小さい長女が熱を出したとき、僕は仕事があったので、長女を寝かせている妻の横で、長女の頭をなでながら「仕事行ってくるわ。かわいそやなあ。大好きだよ。行ってきます」って言って家を出たんです。その後、妻からメールが来て、「なんで私には一言もないの?」って。「あっ!」と思いました。

 僕は「子どもがかわいそう」という心配ばかりになっていたけど、僕が仕事に行っている間、その子どもを妻は家で1人で見なきゃいけない。その妻の気持ちを分かってあげられなかった。そこがひとつの気持ちのすれ違いの始まりでした。

 今は「仕事は大変だ」って言ってる時代でもないですし、僕もすごく反省しています。妻は「子どもファースト」になってもいいんです。でもダンナさんは、子どもよりまず「妻ファースト」にしておかないと、気持ちのすれ違いがだんだん重なって、たまってたまってドン!と爆発してしまいます。

言葉が生まれ、認識できることもある

今川 すごくわかります。私も、初めての子が生まれて里帰りしていたときに、同じような気持ちになりました。夫は週末だけ来てくれていたのですが、来ると「かわいいなあ~」と赤ちゃんに言って、私の両親とお酒を飲んで、いい気分になって寝ちゃうんですよ。

杉浦さん なるほど。

写真 夫婦関係について話す杉浦太陽さん

今川 久しぶりに一緒にいるのに、子どものことしか見てないし、かける言葉は子どもにだけ。私にもっと話しかけてほしいのにな、と思っていました。夫に対するそういう自分の気持ちに当時は気づけていなかったのですが、何年かしてから「産後クライシス」という言葉を知って、「そうだ、あのとき悲しかったんだよなあ」と。

杉浦さん そうか、その言葉が生まれたことによる気づきもあるし、そういう言葉があるからこそ、夫婦で認識していれば軽減できますよね。

24時間子どもといる、家で待つ大変さ

今川 本当に。産後クライシスという言葉は、2012年にNHKの番組の中で取り上げられたことがきっかけで急速に広まりました。

杉浦さん そっか。僕、2007年にパパになったので。

今川 私も2008年にママになったので。

杉浦さん なかったんですね、その言葉。

今川 そうなんです。その悩みに名前が付かなかった時代に、杉浦さんも私も子育てスタートだったんですね。谷岡さんは、第1子が生まれたのは?

谷岡聖史記者 第1子誕生は2015年です。ただ、子どもが生まれる前は、産後クライシスは聞いたことがあるという程度で、よく分かっていませんでした。でも、杉浦さんがおっしゃったように、小さいすれ違いが始まりですよね。こっちはたいしたことないつもりで言ったことが、実際は小さくなくて、相手にはぐさっと刺さる。

杉浦さん そうなんですよね。家で待ってる方が、たまることも大変なことも多いので。仕事は仕事で大変だけれど、家庭や子育てから離れて少し発散できてるんですよね。でも家で待っている方は、24時間ずーっと子どもと一緒にいる。小さいときは特にそう。

写真 夫婦関係について話す杉浦太陽さん

 僕は家のこと、子どものことは夫婦で知っておかなければいけないと思う。妻から話を聞いて、ストレスを少しでも受け止めてあげれば、夫婦の会話も生まれるし、夫婦でちゃんと向き合っていくきっかけになりますよね。

夫婦の愛情曲線は、出産後に下降する

今川 取材していて、すごく衝撃的な数字に出合いました。「夫婦の愛情曲線の変化」として知られる10年ほど前の調査データなのですが、妊娠期には高かったパートナーへの愛情が、出産後にはがた落ちするという結果が出ています。夫のことを「本当に愛していると実感」する妻は妊娠期には74.3%いたのが、子どもが0歳の時には45.5%にがくっと落ちるんです。子どもが成長するにつれて下降線をたどり、2歳の時には34%まで落ちてしまいます。

グラフ 配偶者への愛情の変化

杉浦さん 愛がどんどん減っていくわけですね。

谷岡 厳しいですね。34%に減るとは…。

杉浦さん 出産して子どもに付きっきりになったときにサポートが入ってくれなかったら、夫への愛も冷めていくんだろうなと思う。でも逆に、ダンナさんが奥さんのことを思いやって近づけば、子どもを見ていた奥さんもダンナさんの方を見ると思う。お互いが子どもばかりを見るんじゃなくて、お互いを見るということを心がけておかないと、そのグラフは下がっていくんじゃないですかね。

今川 うちも子どもが3人いるんですが、夫への気持ちは子どもを産むごとに下がっていって、3人目のときがどん底でした。

杉浦さん 本当ですか…。今は?

今川 今は、もう一番下の子が小学校に上がって、私たちも努力をしたこともあって、去年ようやく産後クライシスを脱したな、と思っています。

杉浦さん じゃあ、グラフちょっと戻ってきましたか。

今川 戻ってきました、実は。

写真 杉浦太陽さん(右)と話す今川綾音記者(左)と谷岡聖史記者

カチンときても、全部受け止めよう

谷岡 杉浦さんのように、男性側が産後クライシスに対して危機感を持っておかないといけないですね。

杉浦さん やっぱり、男のプライドが邪魔するときがある。「むこうがつんけんしてたら、絶対こっちからしゃべらないからな」という気持ちがあったりするんですよ。

今川 すみません、つんけんしてました…。

杉浦さん 「そっちがそうなら、こっちもそうするわ」っていうのが一番ダメなパターン。僕が産後クライシスを乗り越えられたのは、「自分のプライドは玄関に置いて、妻と子どもに徹しよう」と覚悟を決めたからです。

谷岡 なるほど、玄関に。

杉浦さん 玄関に、変な意地・プライドは置いていく。こちらが「全部受け止めよう。カチンときても何も言わん、受け止める」という構えでいると、妻の方も言いたいことを言ってスッキリしてくれるし、「こんなことで悩んでたんだ」ということを知ることもできる。「こっちから話しかけよう」と積極的になったことが、僕の場合はすごく大きかったですね。

写真 東京すくすくオンライン講座 杉浦太陽さんに聞く 夫婦の危機の乗り越え方 全9回

杉浦太陽(すぎうら・たいよう)さん

写真 杉浦太陽さん

本名・杉浦太陽 (すぎうら・たかやす)。1981年3月生まれ、40歳。大阪府寝屋川市出身、東京都在住。2001年にドラマ「ウルトラマンコスモス」で主演を務める。2007年、元「モーニング娘。」でタレントの辻希美さんと結婚、現在は中学2年の娘(14歳)、小学5年(11歳)・小学3年(8歳)・3歳の息子の4児を子育て中。家族の日々をブログ・インスタグラムでも発信している。

育児に関する受賞も多く、2011年には「ベスト・ファーザーイエローリボン賞」、2012年には「イクメンオブザイヤー」、2016年には妻とともに「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。「趣味の園芸 やさいの時間」(NHK Eテレ)、BS日テレ「旬感レシピ」、TOKYO FM「TOKYOこどもTIMES」などに出演中。

話を聞いた記者は…

◇今川綾音(いまがわ・あやね)

写真 今川綾音記者

1978年生まれ、埼玉県出身。中1の娘、小5と小1の息子の3児を子育て中。生活部で子ども・子育てを担当。東京すくすくの2代目編集長。

◇谷岡聖史(たにおか・きよふみ)

写真 谷岡聖史記者

1980年生まれ、三重県出身。6歳と2歳の娘を子育て中。さいたま支局、社会部の警視庁担当などを経て、文化芸能部で歌舞伎や落語を担当。

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  • よーすけ says:

    自分は独身、子無しですが
    「産後クライシス」は、正しい表現の言葉なんですかね、??

    何か、破綻することを前提とされた嫌な雰囲気を持った定義ですね

    そこに備えろ!とか、覚悟を持って、など色々有るのかと思いますが。

    そもそも論で言うなら、子供は家族全体で育てるべきで、両親だけで育てようとしている今の日本がおかしい気がします。ベビーシッター制度も確立しない、保育難民や共働き前提、高齢出産に、妊活? こんなにストレスの多い日本でまともに結婚出産育児が出来ている人がそもそも素晴らし過ぎると思うのが、とても悲しい

    よーすけ 男性 40代
  • がちゃぴん says:

    私は産後、精神疾患者になり、産後クライシスが自分の病のせいだと思っていたのですが、多くの方が私と同じ思いをされていることを知り、もっと早く知りたかったと思いました。そして、太陽さんのように賢く夫婦の覚悟を決めて行動される方も少ないとは思いましたが、それが一番の近道なのだとも感じました。

    がちゃぴん 女性 40代
  • すくすくおわり says:

    泣けてきました。
    感性の高さが対話になっていて自分も相手のことを考えられていたのかな?と、、、その後色々重なり離婚しましたが。
    反省はするけど後悔は無駄だという信念がありますが、唯一後悔することかもしれません。別れたにしてもです。

    感度の高い生活をしていきたいと思わせてくださる記事でした。

    すくすくおわり 女性 50代

    取材を担当した今川です。私も鬼のように夫にあれこれ言っていた時期がありました。今になって、「すくすくおわり」さんと同じように「相手のことを考えられていたのかな」と振り返ること、反省することも多いです。「今まさに子育てのスタート地点にいる方に届いてほしい」と考えて企画したインタビューですが、広い世代の方に読んでいただけていることをうれしく感じています。

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