学校の1人1台タブレットで動画やゲーム…家庭でどう管理? 戸惑う親 世田谷区は「あえて制限少なめ」 自治体で分かれる対応

今川綾音、小形佳奈 (2021年5月29日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

タブレット1人1台時代

 国が進めるGIGAスクール構想を受け、小中学生に1人1台のタブレット端末が配備されつつある。保護者からは有害サイトへのアクセスや、動画やゲームへの依存、長時間の使用で健康に影響はないのかといった心配が、学校や教育委員会に寄せられている。一方、利用ルールについて、自治体によって対応はまちまちだ。保護者の声や各自治体の考え方を取材した。

受験生の娘が、勉強中も動画を見るように

 「貸与されたタブレットは設定上、家庭で時間管理ができない。『要りません』と断る権利はなかったのか…」

 4月下旬、東京都世田谷区に住む40代の保護者の女性から、こんなメールが本紙に寄せられた。区立中3年の長女が区から貸与されたiPadを毎日持ち帰り、ノートの横に置いて作業している。しかし女性がのぞくと、関係のない動画やサイトを見ている。「勉強に使ってないでしょ」と指摘すると、長女は「信用していないんだね」と不快感を隠さない。

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キーボード付きのタブレット端末を使い、家庭学習をする中学生(記事に登場する家庭ではありません)=東京都内で

 女性は「反抗期に加え受験という時期に、なんとか家庭独自のルールを作ってスマホとの向き合い方を探ってきたところに、ポンッとタブレットを渡された」と戸惑う。「勉強に集中できていない。何のために与えているのか疑問だ。親子関係も悪化、非常に困っている」と話す。

 学校に「必要のないものは見ないように促してほしい」と頼んだが、学校は「区は『付き合い方を覚えるのも勉強のうち』と考えています」と回答。口頭やお便りでの注意にとどまり、女性が納得のいく指導はない。

世田谷区「制限が厳しいと使う意欲なくす」

 この女性のように、タブレットとの付き合い方に不安を抱く親は多い。世田谷区教育委員会は5月15日に開いた保護者向けのオンラインセミナーで、「端末に不適切な内容をブロックする最低限のフィルタリングは施しているが、YouTubeの視聴や使用時間は制限していない」と説明。全国の先進事例を踏まえ、「制限が厳しすぎると使う意欲をなくす。使わないと効果がないという視点から、あえて制限を少なくしている」とした。

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世田谷区教育委員会が保護者向けに配布したチラシ。「みなさんが自由に使えるようにできるだけ制限をかけない設定になっています」と説明している

時間ではなく行動と結び付けた「約束」を

 ICT(情報通信技術)教育に詳しい国際大学GLOCOMの豊福晋平准教授は、世田谷区の方針を「かなり野心的」と好意的に評価する。保護者は「便利だけれどつながりっぱなしはダメ」というジレンマとうまく付き合うことが大事だと指摘。「時間の約束ではなく、行動と結び付ける」「状況に応じて優先順位を決める」「守りにくい約束で子どもに負担をかけない」といった視点の変換を提案する。

図解 家庭でタブレット端末を使用する際のヒント ①時間の約束ではなく、行動と結び付ける 例:寝る前の1時間や食事時は端末を触らない ②状況に応じて優先順位を決める 例:試験前は動画の視聴を減らし、試験後は増やす ③守れそうな目標を設定する 例:全面的に禁止したり端末を取り上げたりしない

 2017年度から授業でのICT利用を進めてきた東京学芸大付属小金井小の鈴木秀樹教諭は「1人1台端末は大きな可能性がある。直接発言するのは嫌だけれど、端末を介してなら意見を出しやすいなど、発言しやすくなる子もいる」と話す。保護者が心配するトラブルについては、「トラブルや炎上は当然起こる。全員が知り合いで、教師が介入し、振り返りができる学校は、安全に失敗できる場所。いずれ匿名のネット環境に出て行く前に、たくさんトラブルを経験しておいた方がいい」という。

東京23区の対応は? フィルタリング、時間制限…運用さまざま

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タブレットを使って授業を受ける児童(港区教育委員会提供)

 タブレット利用のルールについて、フィルタリング(排除機能)の強弱、時間制限の有無、家庭への持ち帰りの頻度など、自治体ごとに対応はまちまちだ。東京23区の主な状況を紹介する。

渋谷区「必要な動画サイトのみ視聴可能」 港区「最低限のセキュリティーだけ」

 他区に先駆け2017年度から1人1台を導入した渋谷区。「安全を脅かす危険なサイト等への接続を防ぐため」、学習に必要な動画サイトだけを視聴できる設定にした。

 一方、港区は「YouTubeやゲームに以前から接している子どもが多いことから、最低限のセキュリティーしかかけていない」と話す。「社会に出る時とほぼ同じ状況で、子どもに情報モラルを学んでもらい、家庭でも使い方について話し合ってほしい」

 昨年11月、1人に1台を配備した荒川区は「フィルタリングを厳しくしていない」というが、家庭での使い方に関する苦情は届いてないという。担当者は「学習以外の目的には使わないとの同意書を提出してもらい、SNSなどで犯罪に巻き込まれる可能性を子どもたちに伝えている。家庭での協力や理解も進んでいるからでは」と推測する。

練馬・品川区は夜間のネット接続を制限 「いたちごっこ」の現状を明かす区も

 練馬区品川区は、夜間のインターネット接続を制限している。利用可能時間を午前6時から午後10時までに設定している練馬区は「あくまで学習用であり、家庭の端末のように自由に使うものではない」との認識。規則正しい生活や目への影響も考慮したという。

 アプリやゲームについては、取材した全ての区が「ウイルス感染の危険性がある」などと、区教委が配信、または学校が許可したアプリストア以外からのインストールをできない設定にした。

 セキュリティーを高め、教委が利用状況をチェックしても「網をかいくぐって動画サイトを見ようとする子どもたちがいる」といたちごっこの現状を明かす区も。この区では端末を家庭に持ち帰らない日を設定し、教員が利用状況を確認すると告知することを検討している。担当者は「学校、家庭、行政の三者がタッグを組み、子どもたちを見守ることが重要」と話す。

GIGAスクール構想とは

 個々の能力・適性に合わせ、創造性を育む学びを目指し、全国の小中学生に1人1台ずつタブレットなどの学習用端末を配備し、学校には高速大容量の通信環境を整備する国の教育施策。当初、2023年度までに配備を終える計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大でオンライン学習への対応が急務となり、前倒しして実施。自治体により、配備や運用の状況に差が生じている。

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