ママのSOS、社会で共有を 東京都北区の子育てサロン代表・内海さんが書籍出版
中村真暁 (2019年4月19日付 東京新聞朝刊)
東京都北区の子育てママ応援サロン「ほっこり~の」代表の内海千津子さん(48)が3月、利用者らの声をまとめた書籍「子育てママたちからのSOS-産後うつで死なせない!ひとりひとりに寄り添う地域サロンの挑戦」を出版した。子育てをめぐる社会の課題を浮き彫りにし、必要な支援を広く提言する。
虐待を疑われて孤立…そんなママをサロンが救った
「授乳用のストラップで自分の首を絞めたことも何度かありました。今思うと、うつのような症状だったのだと思います」
ある母親の寄稿文の一部だ。赤ちゃんの泣き声を聞いた近所の人に虐待を疑われたと児童相談所の職員から聞かされて、「私だけが最低なママなんだ」と孤立していった。そんなときに訪れたサロンのイベントで、スタッフに明るく声をかけられ「一人じゃないと思えて、涙が出た」と振り返る。
夫が転勤族で住まいを転々としたり、早産などで新生児集中治療室(NICU)で過ごした子や双子を育てていたり-。多様な背景を持つ母親8人のリアルな思いが章ごとに紹介され、内海さんによる問題提起もそれぞれに付く。例えば冒頭の文章を受けて、「顔が見える居場所が必要。官民でタッグを組み、(公的支援から)こぼれ落ちる人を防げれば」と訴えた。
他の地域にも広まってほしい「ママの居場所」
内海さんはフリースクールで不登校生の居場所作りをしていたが、出産後に退職。「ママの居場所がない」と実感し2011年に、同区十条にサロンを開いた。現在は同区志茂にもサロンを構え、育児や資格取得などの講座を1カ月に40種類ほど開いているほか、これまでに延べ2万人から話を聞いてきた。
「現場のSOSは今も社会で共有できておらず、広く発信したかった」と内海さん。多様な声を届けて育児中の人に「一人じゃないと元気になってほしい」と願いを込める。サロンで元気になった母親たちが、他の母親を元気にしていく様子を目にし、「そんな取り組みが他の地域にも広まってほしい。広く、さまざまな人に読んでもらいたい」と呼び掛ける。
1冊1500円(税別)。ネット通販「アマゾン」やサロンで購入できる。