「子育て世代が急増するつくば市に県立高校を」市民団体が要望も、茨城県教育長は否定的
「進学先の選択肢を増やしてほしい」
知事と森作宜民(よしたみ)茨城県教育長に要望書を出したのは「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」。昨年5月、小中学生の父母や子育てを卒業した「先輩」たちで結成した。30人ほどのメンバーに最近、建築環境を学ぶ学生も加わった。
知事らへの要望は昨年11月に続き2度目。市内やTX沿線に新たに全日制高校を設置するとともに、可能な学校から順次、定員を増やすよう求めた。
会の世話人代表を務める元霞ケ浦高校(阿見町)教諭の片岡英明さん(72)は「遠くの学校や私立高に通う子どもと保護者の負担を減らし、進学先で悩む子どもたちの選択肢を増やしてほしい」と訴える。
旧茎崎町がつくば市に編入合併された2002年時点で市内に6校あった全日制県立高は現在、竹園、筑波、つくば工科の3校まで減った。並木高は中高一貫の県立並木中等教育学校に移行し、茎崎高は定時制になった。
転入超過数が全国7位 14歳以下は2位
つくば市では2021年、転入が転出を上回る転入超過数が全国7位の4643人だった。うち14歳以下は866人に上り、さいたま市の1683人に次いで全国で2番目に多い。
2020年度 | 1954人 |
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2021年度 | 2065人 |
2025年度 | 2353人 |
2030年度 | 2741人 |
2033年度 | 2855人 |
2038年度 | 2452人 |
子どもの数の急増を受け、つくば市は2026年度までに小学校4校、中学校2校を新たに開校する予定だ。これにより、市立の小学校は33校、中学校は14校となる。
つくば市の推計では、中高一貫校や私立中学の生徒を除いた市内の中学3年生の数は、2020年度の1954人から、2030年度には787人増の2741人になる。市は2017年度以降、茨城県の当初予算編成に合わせ県立高新設を要望し続けている。
県議会への請願提出へ 署名集める
考える会が県庁で要望書を提出した後、会のメンバーと懇談した茨城県教委の高校教育改革推進室の担当者は、つくば工科高を来春「つくばサイエンス高校」に改編して2クラス増やし、さらに通学が可能な学校の学級増を検討していると説明し、理解を求めた。
そんな中、8月30日の森作県教育長の記者会見での発言が波紋を広げた。森作氏は、人口増はあくまでもつくば市内に限った話で、周辺地域も含めれば生徒数は減っていると主張。「エリア全体として考えていく」との方針を述べた。「(市内でも)高校によっては定員に満たないような学校がある」とも指摘し、県立高新設に否定的な考えを示した。
これに対し、つくば市の五十嵐立青(たつお)市長は9月7日の記者会見で「人口が増えているつくば市に1校造り、その上で周辺の学校の定員を増やしても足りないぐらいだ」と反論。「人口予測データを基に、高校が逼迫(ひっぱく)していくことをきちんと伝えていきたい」と力を込めた。
考える会の片岡さんは「県が策定した『県立高校改革プラン』の推計では、つくばを含むエリアで生徒数は増えるとしている。教育長の認識の誤りでは」と首をひねる。
考える会は県議会への請願提出を目指し、9月中にも署名集めを始める。