共同親権で子育てはどう変わる? 転居、アルバイト、予防接種…「急迫」でなければ離婚後も両親の協議が必要に 参院で民法改正案の審議中

大野暢子 (2024年4月19日付 東京新聞朝刊)
 離婚後も両親の双方が子の親権を持つ「共同親権」の選択を可能とする民法などの改正案は、参院で審議中です。改正法が成立すると、離婚後は父母の一方のみが親権を有する現行制度からの大きな転換となります。離婚後の共同親権を導入することで、子育ての環境はどう変わるのでしょうか。

協議で合意できないなら家裁が決定

ーそもそも親権とは。

子の世話や教育、どこで暮らすかの決定、財産の管理などを行う親の権利・義務のことです。予防接種や手術の同意、アルバイトの許可も含みます。現行法は婚姻中の父母にはともに親権があり、離婚後の親権は一方にあると定めています。親権を持つひとり親は現在、単独で子育ての判断ができますが、共同親権では元配偶者との協議が必要な場面が生じます。

ーそれはどのようなケースですか。

例えば、緊急性の低い医療行為や引っ越し、パスポートの取得などは原則、片方の親だけでは決められなくなります。話し合っても合意に至らなければ家裁が決定します。

ー常に育児の相談をする必要まではないということですか。

食事や子の習い事の選択、ワクチン接種、アルバイトの許可などの日常的な行為に加え、「急迫の事情」がある場合は不要です。

既に離婚した人も、申し立てができる

ー「急迫」とは具体的にどういう事例になりますか。

協議や家裁の手続きを経ていては、子の利益を害する恐れがあるときです。緊急手術や入試の結果発表直後の入学手続き、暴力からの避難などです。

ー離婚後は一律に共同親権になるのですか。

協議離婚なら父母が共同か単独かを話し合いで選びます。裁判で離婚する際は、家裁が親子や父母の関係を踏まえ、子の利益になる方に決めます。

ー既に離婚した人は法改正と無関係ですか。

共同親権に変えるための申し立てはできます。ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の恐れ、正当な理由のない養育費不払いは、変更が認められない理由になり得ます。

子どもが争いに巻き込まれ続ける懸念

ーなぜ改正されるのでしょうか。

離婚で子と疎遠になった親らに、単独親権しか認めていない現行法への不満が強いためです。離婚後も子育てで助け合う父母が増えれば、子の利益になるとの期待もあります。

ーどういう課題がありますか。

離婚する父母は感情的な対立が深いことも多く、子が争いに巻き込まれ続けたり、子を巡る重要な判断が遅れたりすることを懸念する声もあります。 

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元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年4月19日