自民党内からも共同親権に慎重論 超党派議員の勉強会がスタート 野田聖子さんと立憲・福山哲郎さんが発起人

 離婚後の父母がいずれも子の親権を持ち続ける「共同親権」の導入に慎重な立場をとる国会議員らによる超党派勉強会が9日、国会内で初の会合を開きました。発起人は、自民党の野田聖子元総務相と立憲民主党の福山哲郎元幹事長です。政府が今国会にも共同親権を導入する民法改正案を提出するとみられている中、会合でどのような議論があったのかを取材しました。
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共同親権に慎重な議員らによる超党派勉強会で発言する野田聖子さん。左は福山哲郎さん(朝倉豊撮影)

親のエゴではなく、子どもの利益を

 会合には自民党、立憲民主党、日本維新の会、共産党、社民党の14人が参加。野田氏は海外で共同親権が一般的だという推進論に対して「(国際社会で一般的な)選択的夫婦別姓の導入は30年間放置されているのに、にわかに起きた共同親権の議論はどんどん進む。立法府の一員として違和感を覚える」と指摘。性別による対立や中傷が起きやすいテーマであることにも注意を促した上で、親のエゴではなく、子どもの利益や福祉に資する冷静な議論の継続を期待しました。

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共同親権に慎重な議員らによる超党派勉強会で発言する野田聖子さん

「協力できるなら紛争にならない」

 子どものころ、父から母へのドメスティックバイオレンス(DV)が繰り返され、自宅を逃げ出した経験があるという福山氏は「本当にみじめで、恐怖だった」と当時を振り返りました。

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共同親権に慎重な議員らによる超党派勉強会で発言する福山哲郎さん

 法制審議会部会が1月末にまとめた民法改正要綱案に「父母は子の利益のために互いに人格を尊重し協力しなければならない」と記された点には「それができる相手なら離婚や紛争にならない。尊重や協力が困難な現実の中で、いかに子を健やかに育てるかが私たちの役割だ」と語りました。

 会合には法務省民事局も出席し、要綱案のポイントを解説。暴力や虐待などがあり、父母が子どものことを協議できないケースでは単独親権にするという裁判所の基準や、進学や医療などで父母の見解が対立し、裁判手続きが間に合わずに子の不利益になるようなケースは「急迫の事情」とみなし、一方の親だけで判断できると説明しました。

図解 法制審分解で了承された要綱案の主なポイント・論点

当事者の声は? 親と子の立場から

 会合では、離婚時などにトラブルを経験した人々が匿名で参加し、共同親権への不安を語りました。

◇離婚し、高校生の子を育てている当事者 「子の親権は元夫、監護権は私が持っているので、共同親権に近い状況で暮らしている。私たち親子には、できないことがある。まず海外への修学旅行などで子のパスポート取得が必要になっても、元夫の同意が得られず、取得できない。定期預金も、ためてきたのは私なのに、私の一存では解約できない。生命保険金も、子が未成年のうちは夫に支払われる」

 

◇子ども時代に虐待を経験した当事者 「30年前に子どもの立場でDV避難を経験した。法務省の参考資料には、親権行使の新たなルールを、子連れ別居にも適用すると書いている。『連れ去り』などと批判されているが、これは生きるための避難だ」

「急迫」裁判例の蓄積は「ない」

 会合に参加した議員からは、さまざまな意見や疑問が聞かれました。

 立民の枝野幸男前代表はパスポートの取得を巡るトラブルなどを念頭に「(単独の親権行使が認められる)『急迫』が意味する範囲について、裁判例の蓄積はあるのか」と法務省に質問。共産党の仁比聡平参院議員も「共同親権が導入されると、子を巡る紛争はさらに増える。日々の暮らしで大変なひとり親が、裁判所に通い続けなくてはならなくなる」と訴えました。

 法務省は裁判例の蓄積は「ない」と回答。パスポートの取得などで対立する父母や、一方が相手に対して根拠のない訴訟を乱発するようなケースでは、そもそも裁判所が共同親権を認めないと答えました。枝野氏は「一刻も早く離婚するために、親権に関する相手の要求を受け入れざるをえない人は、現状でもたくさんいる」と反論しました。

2月中にも与党で条文審査へ

 議論は当初予定の1時間超えて続き、野田氏が今後も開催することを表明しました。共同親権を導入する民法改正案を巡っては15日に法制審総会で了承され、月内にも与党内で条文審査が始まるとされます。野党だけでなく、自民党内からも慎重論が出始めたことが、今後の議論にどのような影響を与えるのか、注視する必要がありそうです。

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超党派勉強会で共同親権について議論する議員たち

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