お絵かきに夢中な4歳息子が緑色ばかり…親が口出ししたほうがいい? 〈宮里暁美の子育て相談〉

(2024年9月13日付 東京新聞朝刊)

人の顔や犬まで緑色で…

 4歳の長男がオイルパステルでお絵かき遊びに夢中です。緑色が好きらしく、人の顔や犬のようなものまで緑色だったりします。もう少し上手になると本人も楽しいと思うのですが、口出ししてよいのでしょうか。保育園や幼稚園ではどう教えていますか。(4歳男児、30代父親)

イラスト・永須華枝

表現の中に「その子の今」 思いのままに

 絵は表現です。表現は教えません。表現は喜びの中でその子自身の中から生み出されるものですから。表現の中に「その子の今」が刻まれています。それは、かけがえのないものです。形にとらわれて「このように描いたら」なんて口を出したら壊れてしまう世界なのです。自分らしい表現を心ゆくまで楽しめる場所、それが家庭です。どうぞ思いのままに描かせてあげてください。

 紙とお気に入りのオイルパステルを手に入れた子どもたちは、テンテンテンと点を打ったり、グルグルグルと渦巻きを描いたりして豊かな時間を過ごします。誰にも邪魔されなければ、その子は繰り返し楽しむことができます。まさに芸術作品が生み出される瞬間に立ち会っている、と思って大事にしてほしいと思います。生み出された作品を壁に飾るのもとてもすてきなことです。

 緑色が気に入っていて何もかも緑で描くということも、とても大切なことだと思います。彼の中に、緑色でなくては表せない思いがきっとあるのです。もしかしたら緑色の中にいろいろな色を見ているのかもしれません。どうぞそれを感じてみてください。オイルパステルの箱の中にはまだまだたくさんの色があります。そちらに手を伸ばすのはいつのことかなと楽しみにしながら、今しばらくは緑の時代を味わってください。

 家庭で自由に絵を描いて楽しんでいる子は、絵を描くことに対して積極的な気持ちを持つようになります。それがとても大切なのです。一方で「絵は下手だから」と言う子もいます。そのような時には「そんなことないよ。色で遊んでみよう!」と線や色で遊ぶことに誘っていきます。一緒に遊んで一緒に笑う、そんな時間を過ごすと、安心して絵を描き始めるようになります。

 表現は子ども自身のもの。どうぞ、そのままを大事にしてあげてください。

(文京区立お茶の水女子大学こども園・前園長、お茶の水女子大学特任教授)