児童文学作家が毎日お話をつくるサイト「よむよんで」 朗読、翻訳、動画…広がる「お話の輪」
出版社に配慮し、未発表作品を紹介
気軽に未知の本に触れられない子どもたち。旧知の2人は「今までのように、たくさんお話を読んでほしい」と考え、児童文学作家として何ができるか話し合った。
未発表作品なら出版社に迷惑をかけない。そう考えて、サイトを立ち上げ、書き下ろし童話を紹介することに。家庭での読み聞かせはもちろんのこと、商用に使わない限り、朗読の様子をネットに流したり、絵を描いたりするのもOKとした。
小さい子も飽きない300~800字で
4月18日に開設したサイト名は「よむよんで」。はらさんは「読む人と読んでもらう人。両方いるととってもいいね、という思いを込めた」と説明する。
2人が各自毎日1話以上を創作。どの作品も大人が読んであげやすく、小さい子も飽きないように、2〜3分で読める300〜800字の長さにまとめている。
外出がままならない今だからこそ、読んで楽しくなる話を心がけた。こいのぼりやかしわ餅など季節を感じられる事柄や、「疫病退散」のお札作りや鍋磨きなど家で手を動かして楽しむことも題材にした。
大人も元気づけられる作品100話
手作りおもちゃの研究家でもある木村さんの作品「母の日のプレゼント」は、外出できない姉弟が父親と工夫して贈り物を考える。はらさんの童話「うさぎのお店」は、臆病な自分を恥じるゾウをウサギがプラスの発想で励ます。自粛疲れなどで気持ちが落ち込みがちの大人も元気づけられる作品だ。
サイトに上げた作品は今月2日に50を超えた。25日には100話となる「森の図書館」を2人の合作でアップした。
29日までにサイトを訪れたのは約2万人。さらに2人の活動に共感した人たちからの反響も続いた。
ラジオで朗読 中国語への翻訳も
富山市の絵本専門士・堀地はるみさん(58)は、市民パーソナリティーを務める富山シティエフエムで作品を紹介した。今月4日間の放送で「空をとんだこいのぼり」「かしわもちたろう」など4作品を朗読した。
白百合女子大大学院の博士課程で児童文学を専攻する中国人の孔陽新照(こうようしんちょう)さん(28)=東京都世田谷区=は、「一年生」「なつめさんは本屋さんです」など「日本らしい」と感じる4作品を中国語に翻訳。「日本にいる日本語の苦手な中国出身の子どもたちにも届けたい」と話す。
2人の他にも、山梨大教育学部の秋山麻実教授が動画を作ったり、グラフィックデザイナーのhananeko(ハナネコ)さんがお話を基に絵を描いたり、お話の世界が広がっている。
はらさん「自分が一番楽しんでいる」
はらさんは「子どもたちのため、と始めた『よむよんで』だが、自分が一番楽しんでいる」と話す。作品の発表は5月いっぱい続ける予定。木村さんは「正直毎日続けるのは大変だったが、100話まではと頑張った」。
「よむよんで」は投稿サイトのnoteと、Facebookページで公開している。堀地さんの朗読や孔さんの翻訳が読める。