男子だから「偉い」? 小学生がヘアドネーションで考えたジェンダーのこと

飯田樹与 (2021年6月13日付 東京新聞朝刊)

断髪式を終えた大内さん(前列中央)

 病気やけがで髪を失った子どものためにウィッグ(かつら)用の髪を寄付する「ヘアドネーション」に、さいたま市立小学校の6年生、大内天慶(たかよし)さん(11)が協力した。3年ほどかけて胸下まで伸ばす中で、考えを巡らせたのはジェンダーについて。なんで男子がヘアドネーションをすると「偉い」と言われるの? 「普通」って何だ? 

病気の友達のため、妹と一緒にヘアドネ

 きっかけは小学2年生だった2017年夏、友人が急性リンパ性白血病を発症し、入院したことだった。闘病する姿を見て自分にできることはないかと、双子の妹天音(あまね)さん(11)と翌年春、ヘアドネーションのために髪を伸ばし始めた。

 毎日ヘアケアにいそしむ中、嫌になることもあった。伸ばし始めたころは「男子なのに」と長髪をからかわれたり、学校のトイレで個室に入ると「女子だから個室なんだろう」とはやし立てられたり。公共施設のトイレでも奇異な目で見られ、多目的トイレをよく利用した。

 天音さんも髪を伸ばしていたのに、周りの大人から自分だけ「偉いね」と特別視されることにも違和感を覚えた。「『男子は普通、髪を伸ばさない』という考えがあるからだ」。折しもジェンダー平等や差別に関するニュースに触れ、根底に人々が無意識につくりあげた「普通」や「常識」があると気付いた。

「断髪式」で語った思い 普通って何?

 「『普通』は悪いことじゃないけど、それで差別したり、からかったりするのは良くないんじゃないか」。12日、さいたま市の銭湯「鹿島湯」で開いた「断髪式」で、大内さんは集まった友人ら十数人に語った。「普通」を巡る答えは出ていないが、今の思いを伝えた。友人らは「頑張ったね」とねぎらいながら、約40センチまで伸びた髪に順々にはさみを入れた。

大内さん(右)は、友人から髪にはさみを入れてもらった

 さっぱりした頭をなで、「スースーする」と笑顔を見せた大内さん。手にした髪の束の重さを感じながら「男は、女はこうあるべきだという考えを、身の回りから変えていきたい」と力を込めた。急性リンパ性白血病の友人は回復し、髪は今後、小児用ウィッグを作る施設に送る予定。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年6月12日

コメント

  • 私は子供のころから、どうして女の子は髪の毛を長くしてリボンなど髪飾りをつけたり三つ編みなどいろいろな髪形を楽しむことができるのに、男の子はなぜだめなのかという疑問をずっと持ち続けておりました。江戸時代