4兄弟でも「男の子だから」と言わない。”home”の歌手・木山裕策さん夫妻の「性にとらわれない子育て」

(2020年2月22日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
歌手の木山裕策さん㊨と妻の直子さん

歌手の木山裕策さん㊨と妻の直子さん

 4人の息子がいる歌手の木山裕策さん(51)=東京都在住=は、子育ての中で「男の子だから」という言葉を使わない。妻の直子さん(49)とともに、息子たちには、コミュニケーションで互いを理解する大切さを伝え、家事力も付けさせてきた。「男らしさ」を押しつけない子育てのきっかけと実践、その効果を聞いた。

ヒットの3年前 36歳でがんになり、気づいたこと

 会社員として働きながら、歌手としても活動し、家族をテーマにしたヒット曲「home」で知られる裕策さん。社会人の長男(23)と大学3年の次男(21)、高校3年の三男(18)、中学1年の四男(13)の4人を育ててきた。

 「父親としてちゃんと稼ぎ、家族に不安を与えてはいけない」。かつての裕策さんは、そんなふうに構えていた。だが「home」がヒットする3年前、36歳で甲状腺がんになり、その考えは変わった。「家族のために全てを背負わなきゃ、という生き方はつらいなと。それからは、子どもたちにも『明日会社行きたくないなあ』とか、弱音を吐くようになりました」

幼かったころの木山さんの息子たち(本人提供)

幼かったころの木山さんの息子たち(本人提供)

「男は黙って…」じゃない 家事も3歳から自分で

 子どもたちにも「男の子だから強くなきゃ」といった諭し方はしないようにした。「男の子は口数が少なく何を考えているか分からない」という声もよく聞くが、「男性も、弱い部分を含め気持ちを言葉にすることが大切」と直子さん。例えば門限を決めたら、親として考える理由も伝え、反発する息子にはなぜ不満なのか説明してもらうというふうに、普段から自分の考えを言葉にさせ、それに耳を傾けることを心がけた。

 家事にも3歳ごろからかかわらせた。「将来自立するために、子どものうちから日常生活の中でできるようになるのがいい」。食事は当番制。部活で着たウエアは自分で洗濯させた。

「女の子を守るんだよ」では下に見る意識になる

 専業主婦だった直子さんが、「男らしさ」を押しつけない子育ての重要性を感じたきっかけは、次男の出産後、自治体の男女平等参画センターで働くようになったことだ。DV被害者の相談を受けていると、気持ちや考えをうまく伝えられず、暴力に頼る男性が少なくない。幼いころからコミュニケーションの訓練が必要だと感じた。

 「男の子は、女の子を守るんだよ」と子どもに伝える親もいるが、「『守る』という時点で、女性を下に見る意識を植え付けてしまうのではないか」。息子たちには、性別による役割なんてない、と伝えたくて、自身がおかしいと思うことには意見し、夫や子どものためだけでなく、自分の生きがいを大切にする姿を見せてきたという。

4人の息子の子育てについて語る直子さん㊧と裕策さん

4人の息子の子育てについて語る直子さん㊧と裕策さん

長男は自立 次男は大学でジェンダー問題も学ぶ 

 今、1人で暮らす長男は、生活に困ることなく、経済的、精神的に自立。次男は大学で社会学を専攻、ジェンダー問題も学び、直子さんと議論する。

 裕策さんは最近、動画投稿サイトYouTubeの「井戸パパ会議」という番組で、子育て経験の発信を始めた。直子さんも、母親たちが交流する「男の子ママカフェ」を開く。「性にとらわれない子育てで、親も楽になれるよ、と伝えられたら」

木山裕策(きやま・ゆうさく)

 1968年、大阪府出身。36歳の時に甲状腺がんが発覚。医師から「声が出なくなるかもしれない」と言われたことをきっかけに、歌手を目指す。リクルートに勤務中の2008年、テレビのオーディション番組に合格し、家族をテーマにした楽曲「home」でメジャーデビュー。その後も12年間、会社員と歌手の「2足のわらじ」の生活を続けるが、2020年から歌と講演を中心に。歌手活動の傍ら、さまざまな場所で講演をしている。

木山直子(きやま・なおこ)

 東京都内の男女平等参画施設に勤務。大学で劇芸術を専攻し、文学、映画、演劇から人生を学ぶ。常にジェンダー的にこれでいいのか?と声をあげ続けることをモットーにしている。4人の息子たちにも「社会に対して無関心になるな」と言い続けている。

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