「悪魔の3歳児」との帰省でくたくたになった〈加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!〉
この正月は大阪の実家に帰省した。前回は車で帰ったら、みごと渋滞にはまって8時間以上かかり、今回は新幹線で帰ろうということになった。
しかし、新幹線なら楽ちんかというと、そうでもない。5回乗り換えを含む、計4時間超の旅。上の3人は、もうほぼ手がかからないが、「悪魔の3歳児」の四男が、駅のホームでいきなり走り出したり、エスカレーターにひとりで乗るとごねて泣き喚(わめ)き、兄の分のサンドイッチをくれと車内で叫んだり、寝転んだり…と、やっとのことで実家に到着した。僕はくたくたになったが、さすがの妻は耐性があるようで、「新幹線のほうが楽」と言っていた。
「今年のお年玉は過去最高額を更新だな」と喜んでいた長男。「なんで2年先に生まれただけで差があるの?」と、長男とのお年玉の金額差に顔を真っ赤にして抗議する次男。「パパさぁ、銀行に3000円とか持ってる?」と、父親より金持ちになったと思って、うれしそうな三男。もらったお年玉袋をすぐさま投げつけ、笑って走り去る四男。
久々に会った父は、また少し老けて見えた。「2人目の名前まではわかるけど、君は誰や?」と孫たちに聞いていて笑ったが、やっぱり覚える気はなさそうだった。
2泊のあっという間の滞在を終え、さあ帰ろうか、という時。「ママに預けるとどっかやっちゃうから、お年玉は自分で持ってるよ」と言っていた次男のお年玉袋が、テーブルに置きっぱなしだった。
帰りの新幹線から富士山がくっきり見えた。あと何回父のいる正月があるんだろうと思った。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。13歳、11歳、6歳、3歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。