それぞれの時は流れ…「もう別々でもいいかなって感じ」〈加瀬健太郎 お父ちゃんやってます!〉
「もう12月か。今年もこれといって、何にもしてないなあ」。50になって、五十肩になった僕には、驚くほど早く1年が過ぎる。4歳の四男は、「きのうのきょう、宇宙船作ったじゃん。もう1回作ろうよ」と誘ってくる。まだ時間の感覚なんか、全くないのかもしれない。他にも「きょうのあした、ダーウィン(四男の好きなテレビ番組)見たっけ?」と聞かれたこともある。
三男はというと、家の近くの坂のところに来ると決まって、「このまえさ、ここにでっかいカエルいたよね?」と、今見てきたかのように興奮した様子で言うが、あれはもう4年も前のこと。
次男は「次の誕生日のごはん何にするか決めたよ」と、一年中、自分の誕生日の献立を考え続けている。「牛肉は高いから、豚肉のステーキを腹いっぱい食べてみたい」と最近は言ってる。うちの食卓に上るお肉は、主に鶏肉か、豚の細切れ。誕生日ぐらい、牛肉を腹いっぱい食べさせてあげようと思う。
長男は「1日に2時間だけ働いて生活できるかな?」と聞いてきた。「まず、部屋代でしょ。それにごはん代。毎日安い豆腐を食べてればなんとかなるか」と作戦を練っていた。働く2時間以外は何をするのか聞くと、「うーん、遊ぶ?」「……」。
残りの人生、ざっと見積もって30年。「これから、どんなふうにふたりで生きていこうか?」と妻に聞くと、「なんかもう50年ぐらい一緒にいる気がするから、もう別々でもいいかなって感じ」と言われる。できるなら、ふたりの時計の針を巻き戻したい。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。14歳、12歳、7歳、4歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。