子どもに手を上げてしまう背景に「親自身の傷つき」 回復プログラムで一歩を踏み出そう

浅野有紀 (2019年11月7日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 子育てに悩んで子どもに手を上げてしまう…。そんな親自身の心をケアしたり、怒りをコントロールしたりする方法を伝えたりする「回復プログラム」を実施している団体もあります。エンパワメント・センターを主宰する森田ゆりさんに親の回復にとって大切なことを聞きました。

「親も必ず変わることができます」と話す森田ゆりさん

全13回で痛みを語り合う

―親の回復プログラムとはどのようなものなのでしょうか。

 子どもへの虐待は、これまで人として尊重されなかった痛みや悲しみを怒りの形で子どもに爆発させている行動です。親の回復のための「MY TREEペアレンツ・プログラム」では、約10人の親たちが13回のセッションを通して、痛みを語ります。「自分は大切にされるべき人間だったんだ」と気付くことで、それまでの「自分は必要のない人間」という思い込みを手放していく作業です。

 例えば「自由奔放な娘に腹が立ってしかたない」と、体罰するお母さん。「人に迷惑をかけないように生きなさい」と親から繰り返し言われ、それにとらわれてきた、と語り始めました。娘の振る舞いが、自分には許されなかったという子ども時代の悲しみを誘発し、怒りとして表れていた。プログラムを進めるにつれ「娘は自由に生きられていてよかった」と思えるようになっていきました。

回復プログラムの進行などを学ぶスタッフら(森田ゆりさん提供)

親や夫から「育て方が悪い」と言われて孤立

―手を上げてしまう人たちが抱えているものとは。

 親に深い傷を残している経験として多いのは、性暴力やDV(ドメスティックバイオレンス)被害です。子どものころ、常にきょうだいと比較されたり、親の期待に沿わないと怒られてばかりだった条件付きの愛のダメージも大きいです。

 虐待の背景には、子どもが一晩中泣いてばかり、感覚過敏、激しい多動性など、強い特性がある場合もあります。親や夫に「育て方が悪い」と言われて孤立し、思わず手を上げてしまった母親は少なくない。

 行政の親支援の中には、子育てのスキルを教えようとするものもありますが、その前に親自身の傷つきをどうするかに目を向けなくてはいけません。

かわいいときも、かわいくないときもある

―子どもへの接し方に悩む親に伝えたいことは。

 今、子どもへの暴言・暴力があったとしても、変わりたいと強く願う人は必ず変われます。最近は、自分の子だからかわいいはずなのに「自分は子どもを愛せない」と悩む人も多い。でも、子どもはかわいいときもあるし、かわいくないときもある。自分の気持ちを認め、許して、ケアしていく。それが回復への第一歩です。

森田さんは著書『虐待・親にもケアを』にプログラムへの思いや体験談を綴っている

親の回復を目指す「MY TREEペアレンツ・プログラム」

 虐待防止の専門職を養成するエンパワメント・センター主宰の森田ゆりさん=大阪府高槻市=が開発。2001年の開始以降、全国で実施され約1300人が参加。全13回で感情のコントロールや子どもとの向き合い方を学ぶ。無料。実施先の情報などは一般社団法人MY TREEのホームページで。

11月は児童虐待防止推進月間。虐待を防ぐため、親子を支えたり助言したりする人々から、子育てに奮闘する親たちへのメッセージを〈特集 変わりたいあなたのために〉として随時掲載します。

コメント

  • 虐待され育ち、過去の傷が癒えないまま母親になり、負の連鎖を繰り返しています。大人として、虐待してしまったことへの罪悪感、後悔、反省などの苦しさと子どものときの消化されていない虐待されたときの悔しさ、悲
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  • 私が幼い頃からずっと身体的にも精神的にも虐待を続けてきた母。 母は社交的で外ヅラが良く世間体が大事で、我がとても強い人でした。今は認知症です。 すべては母の強い我欲で家庭は回っていました。世間で良