都内の児童相談所でクラスター 新たな子どもを受け入れられず「緊急保護の役割を果たせない」

太田理英子 (2022年2月17日付 東京新聞朝刊)
 虐待された子どもらを受け入れる東京都内の複数の児童相談所の一時保護所で、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した。感染した子どもは一時保護所にとどまって療養中。感染が広がる恐れがあり、新たに子どもを受け入れることができない。現場からは「緊急保護の役割を果たせない」という声が上がる。 

入所の際、検査する余裕がない

 江戸川区児童相談所の一時保護所で今月4日、児童1人が発熱した。感染が判明した後、8日までに児童16人、職員5人が感染した。児童を受け入れる前にPCR検査をすれば感染リスクは減るが、入所に一刻を争うケースも多く、検査の余裕はない。

 施設内の感染予防策について、区児相一時保護課の茂木健司課長は「マスク着用などは徹底しているが、子どもたちは施設内の同じ場所で過ごすことが多い」と難しさを指摘した。

感染スピードが速く人手不足に

 児童養護施設などで感染者が出て隔離する場所がない場合、仮設や賃借で部屋を確保するように、厚生労働省は都道府県などに事務連絡を出している。江戸川区児相も一時保護所とは別の建物を用意していた。

 しかし感染拡大のペースが速く、子どもに加え職員5人も感染して人手不足に陥り、感染した子どもを別の建物に移すことができなくなった。感染者全員が軽症であることなどから、今は一時保護所内の個室で隔離する。感染していない児童10人も施設内で生活を続ける。家庭から離れて不安を抱える児童が少なくない中、職員は防護服を着用するなどして対応している。

近隣の施設などに移して対応

 感染を広げる可能性がある以上、新たに子どもを保護することはできない。4日以降、休日や夜間に保護要請があった3人は緊急措置として保護したが、受け入れ可能な近隣の一時保護所や児童養護施設に移ってもらった。

 都内では、ある都児童相談所の一時保護所でも、8日までに児童15人、職員9人が感染するクラスターが発生した。他の児相から職員の応援を得て施設の運営を続けている状態で、新たな子どもの受け入れができていないという。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年2月17日