袖ケ浦の施設で障がい児の生活を支援 弓場さんに贈られた「ヒーロー」の称号

山本哲正 (2023年2月27日付 東京新聞朝刊)

ふる里学舎青年寮で子どもたちをサポートする弓場洸紀さん=いずれも袖ケ浦市で

 千葉県袖ケ浦市の福祉型児童入所施設で子どもたちをサポートする生活支援員の男性が、福祉現場の第一線で活躍する若手職員として「社会福祉ヒーローズ」の称号を贈られた。全国社会福祉法人経営者協議会(東京都千代田区)による称号で今回は全国で6人。「日本一」を決める全国大会が28日、千代田区の大手町三井ホールで開かれる。

10代の少年と関わって

 千葉県内で1人選ばれたのは、社会福祉法人佑啓会(ゆうけいかい)所属で今は「ふる里学舎青年寮」で働く弓場洸紀(ゆばひろき)さん(25)。何らかの事情で家庭で過ごすことのできない障がい児たちに向き合う「ヒーロー」だ。

 大会で報告する事例は、成育環境が原因で触法行為を繰り返していた10代の少年だ。入所してしばらくは「めちゃくちゃ良い子」だったが、1カ月ほどして慣れてくると喫煙を望んだり、ストレスで物に当たったり、自分を傷つけたりした。マニュアルのない現場で弓場さんは正面から向き合った。

 「なぜ悪いことをしてはいけないか」。その子と一晩一緒に考えた。「彼なりに『このままじゃいけない』と必死に考えてくれた」が、すぐに答えは導き出せなかった。1カ月間、様子を見つつ、弓場さんは自身の経験も振り返った。

学生たちにグループで討論してもらっている弓場さん(左)=佑啓会提供

 弓場さんは母子家庭に育ち、母親から愛情を注がれた。ただ、中学生の頃に制服を着崩したり、授業を適当に受けたりしたことはあった。すると、学校で物がなくなるトラブルがあった時に「おまえたちじゃないか」と疑われた。

 悪いことをすると信用をなくす。本当に困った時や何か疑われた時に、信頼されていないと助けてもらえないし、信じてもらえないと痛感した。少年に切々と訴え、「普段からコツコツと生活した方が、何かあった時に助けてもらえる」と伝えた。

 少年は、掃除を手伝ったり、幼い子の面倒をみたりと変化が見えた。この数カ月、しっかり続いている。部屋の片付けもする。「将来、一人暮らしすることをイメージしている」。弓場さんの目にはそう映る。

 こうした体験を大会で紹介する予定の弓場さんは「社会に出て、皆さんと一緒に暮らして働くことを目指して頑張っている。子どもたちのそんな姿が伝わるとうれしい」と語る。

 全国大会は28日午後1時から。ゲストは人気俳優の松本まりかさん。YouTubeライブ配信(大会公式サイト「社会福祉HERO’S」で案内)も予定している。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年2月27日