’’時間外労働に残業代を’’と訴えた公立小教員 「次世代の教員のため、長時間労働是正の一歩に」 10月1日に判決
毎日2~3時間の時間外労働は「自主的なもの」
午前8時半出勤、午後5時退勤、休憩は45分間。2017~18年の男性の規定の勤務時間だ。だが、男性は「実際は毎日2~3時間の時間外労働があった」と語る。
朝は7時半に出勤。職員室で欠席児童の保護者からの電話に対応し、書類をチェック。8時には登校してきた児童を教室で迎え、8時10分ごろから朝マラソンとして児童と一緒に校庭を走った。
午後4時ごろに児童が下校した後は職員会議のほか、学力向上や食物アレルギー対応の委員会などもあり、午後5時すぎに翌日の授業準備や学級便り作成など事務作業をしていた。この間の残業時間は月平均約60時間に上った。
1971年制定の給特法は教員の仕事の特殊性を踏まえ、基本給に一律4%を上乗せする代わりに、校外実習と学校行事、職員会議、災害対応の「超勤四項目」を除く時間外業務は自主的なものとみなし、残業代は原則出ない。
20~30代の教員「結婚できても子育てはできない」
男性は「時間外労働の9割は4項目以外の校長から命じられた業務だ」と主張する。18年9月、超勤四項目以外の教員の時間外勤務が労働基準法上の「労働」に当たるとして、県に17年9月~18年7月分の残業代の支払いを求めて提訴。裁判で県側は、校長が時間外労働を命じたことはなく、男性が自主的に行っていたとして請求棄却を求めている。
男性は訴訟に踏み切った理由として「次世代の教員のためもある」と話す。経験が浅い若手は毎日4~5時間の残業をしているといい、「20~30代の独身教員たちが『結婚はできても子育てはできない』と言っていたのはショックだった」。心身を病んで休職する若手も多く見てきた。訴えが認められることで、長時間労働の是正につながると期待している。
給特法制定から50年 「労基法上の労働かが問われる初の裁判」
裁判で原告側の専門家として意見書を提出した埼玉大の高橋哲(さとし)准教授(教育法学)は「教員の残業が労働基準法上の労働時間と認められるかどうかが問われる初めての裁判」と意義を強調する。
高橋准教授によると、制度が問題となる背景には教員の多忙化がある。原則として教員に残業を命じないと定めた給特法が制定された1971年当時は、現在に比べ教員の時間外労働は少なかったが、その後、学習指導要領の内容が増え、作成しなければならない書類も増加。最近でもプログラミングや英語など課される業務が増え続けている。
高橋准教授は、原告の主張が認められれば「行政は時間外労働に対価を払うか、教員を増やすか、学級の子どもの数を減らすなどの対策につながり、教員の働き方の改善になる」と指摘している。
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