同じ漫画で盛り上がりたい…が僕の方がハマってしまった〈古泉智浩さんの子育て日記〉36
うーちゃんは「ドラベース」
僕はこれでも漫画家の端くれなので、子どもにも漫画に親しんでほしいと願っています。4歳の養子・ぽんこちゃんは、まだ平仮名も読めないので当分先の話ですが、小学2年の養子の長男・うーちゃんは「ドラベース」というドラえもんが野球をする漫画の大ファンです。それが高じて、現実の野球も好きになりました。
漫画の楽しみをうーちゃんと共有したい。そう思って僕も「ドラベース」を全巻読んでみましたが、おじさんの心では児童向けの漫画になかなか感情移入できず、気持ちの共有ができませんでした。
古い傑作漫画を熱烈おすすめ
そんなある日、うーちゃんが見たことのない野球漫画を読んでいました。おばあちゃんに書店で買ってもらったそうです。よくよく見ると、僕も読んでいたちばあきお先生の野球漫画「キャプテン」「プレイボール」を描き継いでいるコージィ城倉先生の作品「プレイボール2」ではありませんか。
城倉先生は、ちば先生そっくりの絵柄で、未完の「プレイボール」の続きを描いているのです。まるで、若くして亡くなったちば先生がよみがえったか、ちば先生の霊が城倉先生に憑依(ひょうい)したかのようです。僕は古い傑作漫画を読み返す活動をしていて、3年前に「キャプテン」と「プレイボール」も読んでいました。
思わず、「うーちゃん、それはね、墨谷二中でキャプテンだった谷口が、墨谷高校に入ってまたキャプテンをするお話の続きなんだよ。だから『キャプテン』と『プレイボール』を読んでから読むともっと面白いよ」と熱っぽく勧めてしまいました。主人公の谷口が度を越えた頑張り屋で、チームメートも彼につられて頑張り屋になってしまう素晴らしい物語なのです。
僕の圧が強すぎたせいなのか
レンタルコミックで読んだ両作品を、この機会にもう一度借りようとしました。ところがなんと、この1カ月ほどの間にレンタル店が古い漫画を大量処分していました。僕自身、まだ読みたい本がたくさんあったので激しいショックを受けました。こうして文化が失われていきます。
幸い、両作品の古本を全巻セットで買うことができました。どちらも20巻以上あって読むのが大変で、うーちゃんは中断しています。漫画の話で盛り上がりたいのですが、僕の圧が強過ぎたせいもあるかもしれません。
「プレイボール2」を読み進めている僕の方がハマってしまいました。早くおばあちゃんに続きを買ってもらってほしいです。(漫画家)