〈坂本美雨さんの子育て日記〉69・娘に言われた「できるだけ長く生きて」
「死」について、娘が大泣きした
トゥモーロー! アイラブャートゥモーロー!とわが家に響き渡るここ数週間。シッターMちゃんから、昔舞台「アニー」に出演していたころの話をよく聞いていたため、今年こそはと、この春初めて観に行った。
4年ぶりのフルバージョン上演で長い時間だったが、集中して見入っていた。やはり同世代の子どもが立派に歌い演じていることにびっくりしたのか、家でもパンフレットを熟読し、アニーは何歳、一番小さいモリーは何歳、と年齢がとても気になるよう。大勢で作り上げる舞台の喜びを娘にもいつか味わってもらいたいと思っていたが、実際ステージ上のキッズたちのスキルを目の当たりにすると、いったい何歳からどれほどの習い事をし、親御さんもどれくらい付き添うのか…と現実を突きつけられる。きっと何年間も、家族一丸となって取り組むのだなぁ。ステージを見守る側の心境を想像し、静かに感動する。
その後、娘がもう1回観たい!と熱心に言うので2度目の観劇をし、先生との交換日記ノートに書いてみたら?と勧めると、感想を説明するのが苦手な彼女はがんばって「ハニガンさんが子どもがきらい!というかんじでふえふいたりしてこわかった、けど、さいごはやさしいんだなと思ったよ」と書いていた。私は2回とも同じところで、最後にアニーがウォーバックスさんや従業員たちに祝福されるシーンにウルッときた。1人の子どもがこんなにも大人たちを明るく照らす太陽になれるのだと。そして、本当はすべての子どもがこうして大切にされるべきなのだ、と思い、胸が締め付けられる。
先日、眠るときにママがいつか死ぬ、という話題になり、娘が大泣きした。わが家では早くから死の話はしてきたが、こんなふうに泣いたのは初めてだった。じーじの死を通して急にリアルに感じ始めたのかもしれない。「だってじーじは71歳だったでしょう」と言う。そうだよ、だからまーだまだあるでしょ、と言いかけて、あれ? もう30年もないんじゃ…? とがくぜんとした。「できるだけ長く生きて」と彼女が言う。死なないで、ではなくて、できるだけ長く、という切実さ。「わかった。健康にいいご飯を食べて、運動して、よく笑って、できるだけ長生きする」と約束する。そしてタイムリーなことに、今日は人生初の人間ドックである。気が重いが、彼女との約束を果たさねばならない。
坂本美雨(さかもと・みう)
ミュージシャン。2015年生まれの長女を育てる。SNSでも娘との暮らしをつづる。
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