W杯の最中に「妻の出産立ち会い」で帰国!イングランド代表選手が話題
監督が後押し「人生にはサッカーより重要なことがある」
デルフ選手は4日、自身のインスタグラムを更新し、「私と妻と2人の娘で、妹となる赤ちゃんを世界に迎えた。幸せと感謝を言葉にできない…。ロシアに戻るよ」と第3子の出産を報告。自らの笑顔の写真を掲載した。コメント欄は、チームメートやファンの「おめでとう」の言葉であふれた。
デルフ選手が一時帰国のため欠場したのは、決勝トーナメントの1回戦。イングランドはPK戦の末にコロンビアを制し、8強入りした。
ロイター通信によると、サウスゲート監督がコロンビア戦の前の会見で、デルフ選手について言及。1次リーグの2試合に出場し、ゲーム後半の守備の要として期待も大きい選手だが、監督は「人生にはサッカーより重要なことがある。これは大きな大会だが、家族はもっと重要だ。子どもが生まれる機会は、人生で1日しかない。父の世代なら違う見方をするかもしれないが、家族のためにそこにいるべきだ」と後押しした。デルフ選手は7日に予定される準々決勝のスウェーデン戦には間に合う見込みだ。
ブレア元首相の育休取得で制度が普及
英国では、ブレア元首相が2000年の第4子誕生後、自宅で2週間執務する育休を取得し、国が進める育休制度の普及に一役買った。高安健将・成蹊大教授(英国政治)は「英国で育休制度が定着し、男性にとって出産の大切さが理念として受け入れられている前提はあるが、人生の中で、サッカーの大舞台より家族の出産を選んだデルフ選手の決断はなかなかできないことだった。事前にチームの理解を得て、快く送り出された点にも注目した」と評価する。
英国だけではない。元大リーガーでプロ野球ソフトバンクに所属した米国出身のファルケンボーグ投手も11年、福岡市内で出産した妻に付き添うため、試合を欠場したことがあった。
遅れる日本、育休取得率は5%
だが、日本の意識は追いついていない。自民党の萩生田光一幹事長代行が5月、乳児期の育児について「ママがいいに決まっている」「言葉の上で『男も育児』と言っても、子どもにとっては迷惑な話かもしれない」と発言。批判が噴出したが、女性に育児を求める意識は根強い。
実際、政府は20年に男性の育休取得率を13%とする目標を掲げたが、17年度の速報値で5%強にとどまった。年々増えてはいるが、80%を超える女性との差は大きい。15年度の厚生労働省調査によれば、育児休業を取得しなかった理由として最も多かったのは「職場が取得しづらい雰囲気だから」の26%だった。
3人の子の出産に立ち会った父親支援のNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の安藤哲也代表理事は、5年連続で男性社員の育休取得100%を達成している生命保険大手の日本生命保険の事例を挙げる。「休みを取ることでキャリアに傷がつき、同僚に迷惑がかかると恐れる風潮が日本にはあるが、みんなが取れば当たり前になる。管理職が意識を変えれば、男性も育休は取れる」と断言する。
「男性の5%しか育休を取らない社会では、政府が言う女性活躍も出生率のアップもできるはずがない。『育児は母親の仕事』という意識はもうやめるべきだ。4年後のW杯では、日本の選手にとっても育休が当たり前、となればいいですね」と話した。