骨盤ケアは正しい姿勢と呼吸法で 尿もれ、頻尿、子宮脱… 産後トラブル防げます
「きつく締めなければ」と思っていたが…
「育児中は抱っこで肩が前に出てしまいます。肩甲骨を後ろに寄せて胸を開いて」-。千葉県勝浦市で7月、産後の母親を対象に開かれた骨盤エクササイズ教室。助産師らの指導の下、参加者4人があおむけやあぐらなどの姿勢になり、骨盤底筋を鍛えるポーズをとった。7カ月前に5人目を出産したという主婦(32)は「骨盤底筋はきつく締めなければ、と思っていたが、緩くてもちゃんとした姿勢をとることが大事なんだと分かった」と話す。
市の委託を受けて指導しているのは、亀田総合病院(同県鴨川市)消化器外科の医師や助産師、理学療法士でつくる「産後骨盤ケアチーム」だ。リーダーの消化器外科部長、高橋知子医師は排便障害が専門。日々の診察の中で、患者の多くに出産経験があり、便もれ以外に尿もれや頻尿、直腸脱や子宮脱など複数の骨盤周りのトラブルを抱えていることに気づいた。
受診先が産婦人科、消化器外科、泌尿器科にまたがる患者も少なくない。院内で呼びかけ、3年前、検査からリハビリ指導までワンストップで産後の骨盤ケアを担うチームを発足させた。
猫背だと腹圧で骨盤底筋を痛めてしまう
「膣や肛門周りを締めて鍛えられる骨盤底筋はほんの一部で不十分」と高橋さん。骨盤底筋は薄い筋肉。猫背などで肩と骨盤の間が折れ曲がると、おなかにかかる圧力が高まり、骨盤底筋が押し下げられ、引き伸ばされていく。骨盤底筋を痛める原因だ。
高橋さんらは骨盤底筋のエクササイズとして、正しい姿勢と呼吸法で腹圧を減らすフランス発祥の骨盤ケア法を推奨。立っている時や寝ている時などは肩と骨盤を最大限に引き離す感覚で、背筋を真っすぐ伸ばす姿勢を心掛ける。
いすに座る時も背もたれに寄りかからない。かがむ時や起き上がる時、排便時、授乳時などもおなかを丸めないよう気を付け、骨盤を中心に折り曲げるようにする。「帯を締めた着物姿の感覚で、日ごろの姿勢を気を付けるだけでトレーニングになる」
悪い姿勢、いきみ、腹筋運動などは避けて
横座りや足組みなど左右非対称の姿勢や、排便でのいきみ、重い物を持つこと、腹筋運動、腹部を締め付ける下着なども腹圧がかかるので、なるべく避ける。
併せて大切なのが腹式呼吸。息を吐くと横隔膜が上がり、骨盤底筋全体が引き上げられる。肛門や膣周りは、息を吐く前に一瞬だけ軽く締める。「繰り返すことで骨盤底筋に張りが出て、痛んだ筋肉の修復が促されます」
チームの私的な院外活動として、オンライン練習会も開いている。「産後の母親だけでなく、老若男女問わず誰にでも必要なエクササイズです」。詳しくはフェイスブック(「Coral Body Works」で検索)で説明している。