子ども予算「倍増」いつになるの? 政府は少子化「危機的状況」とするが財源議論は先送り 防衛費の増額優先

坂田奈央 (2022年12月2日付 東京新聞朝刊)

 岸田文雄首相が目玉政策に掲げる子ども関連予算の「倍増」で、議論の遅れが際立っている。達成の時期や道筋、裏付けとなる財源の検討は来年度に先送りされ、2027年度に対国内総生産(GDP)比2%まで増額する方針が示された防衛関連費の後回しにされている。今年の出生数は過去最少を更新し、初めて80万人を割り込む見通しだが、少子化への危機感の薄さは否めず、専門家は「国の持続可能性がなくなる」と訴える。 

論点整理で財源確保の方策には触れず

 子ども・子育て支援策強化を検討する政府の全世代型社会保障構築会議は先にまとめた論点整理で、首相が予算倍増の方針を示していることも踏まえて「恒久的な施策には恒久的な財源が必要」と言及した。ただ、新たに負担を求める対象や方策には触れず、「支援策の具体化と合わせて検討」と記すにとどまった。

 だが、少子化対策は待ったなしの課題だ。昨年の出生数は過去最少の81万人余りだったが、厚生労働省によると、今年9月まででは前年同期比4.9%減となり、1947年の統計開始以来、初めて年間80万人割れとなる公算が大きい。政府は「危機的状況」(松野博一官房長官)という認識を示すが、子ども関連予算の倍増に向けた道筋を明らかにするのは、来年6月ごろに策定する経済財政運営の指針「骨太の方針」に持ち越した。

専門家「社会保障制度が維持できない」

 対照的なのが、防衛関連費の増額を巡る議論だ。首相は先月28日、鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相に対し、5年後に対GDP比2%の水準まで引き上げるよう指示。年内に財源も固めることを求めた。これに先立ち、防衛力強化に関する政府の有識者会議は報告書で「幅広い税目による負担が必要」と、増税を提起している。

 子ども関連予算を巡っては、倍増によって達成を目指す水準もあいまいさが残る。経済協力開発機構(OECD)調査によると、日本の子ども・子育て支援への公的支出(17年)は対GDP比で1.79%と、3%台の欧州諸国の半分ほどだ。一方、政府が公式に明らかにしている数字としては、こども家庭庁の23年度予算概算要求額の約4兆7000億円や、22年度当初の少子化対策予算の約6兆円などがある。「発射台」次第で増額幅は大きく変わる。これに対し、防衛関連費の対GDP比2%は約11兆円と明確だ。

 日本大学の末冨芳教授(教育財政学)は「国を維持するには、子ども予算の増額が喫緊の課題。防衛費の議論ばかりを優先させるべきではない」と強調。政府の議論の遅さを指摘し、「国民全体で将来世代を支えなければ、あらゆる社会保障制度が維持できなくなる」と警告した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年12月2日