〈中倉彰子さんの子育て日記〉62・わが子に教える難しさ

(2018年3月9日付 東京新聞朝刊)

学童クラブで将棋ブーム

 先日、小学1年生の長男シンがお世話になっている学童クラブで、将棋の講義をしました。

 部屋に入ると、低学年を中心に50人ほどの子どもたちが遊んでいました。私が講義用の大きな盤と駒を取り出すと、物珍しそうに集まり、「あれ? だれのお母さん?」と私の顔をのぞき込みます。

 将棋クイズの後、人数が多かったのでチームで対局。厚めの木の盤を持参したので、私と彫り駒で一手ずつ交代で指すという体験もしてもらいました。シンはちょっと照れくさそうでしたが、学童内では翌日から、将棋がブームになっているそうです。ヤッター!

道場デビュー

 最近の課題である、次姉マキの将棋熱はというと、なんとか持続しています。先日は、シンと一緒に東京・千駄ケ谷の将棋会館に行き、「道場デビュー」を果たしました。シンもうれしそうで、「いつもここでお昼を食べるんだよ」などと、ちょっと先輩風を吹かしていました。

 マキは、四局指して全敗。「トワイス戦法」と名づけた攻撃の戦法「棒銀」でいいところまではいくのですが、一歩届かず。また将棋を嫌いにならないか心配しましたが、夜になると「ママ、将棋やろう」と言ってくるようになったので大丈夫そうです。私とは、駒落ちというハンディ戦で指し、アドバイスをもらいながらも、勝てるので楽しいのでしょう。

 将棋アニメの影響で、駒を顔の高さまで持ち上げ、左右に振ってからパチリ。形から入るのと、棋力より手つきの方の上達が早いのは、姉弟で似ています。ちょっと自信がつくと、パパに「将棋しよう」と対局を申し込みました。

 夫はよそ様の子どもにはユーモアたっぷり、楽しく教えられるのですが、自分の子どもにはできません。シンには「むやみに駒を触らない!」「なんだこの手は。もっとしっかり考えなさい」と、口調が厳しくなります。後で私に「こんな教え方じゃ将棋嫌いになっちゃうな」と反省しているのですが…。

 案の定、マキにも厳しくなり、泣かせてしまいました。マキは「2回も負けた。勝たしてくれると思ったのに~」。やはり、まだ早かったか。果たしてマキは、将棋を続けてくれるのでしょうか。

 長女のマイはこの春、中学生になります。「スマホを持ちたい」と言い出し、どうしたら良いものか考え中です。子育ての悩みは尽きませんね。(プロ棋士)