「憲法を魔法使いに奪われた日本を救え!」 ゲームで学ぶ大切さ 若手弁護士の会が製作
21条が奪われると…「テレビチャンネルは一つだけに」
「東京は『政府のやってることを知ろうとしたら捕まります』だって」「『テレビは一つのチャンネルしか見られない』も出てきた」「やばい。行って助けないと」。体験会で親子連れら15人が三つのグループに分かれ、日本地図の描かれたボードを囲んだ。
ゲームの設定はこうだ。
とある時代の日本。北は網走から南は沖縄まで、12の都市で市民が悪い魔法使いのせいで憲法を忘れ、憲法の条文に関連した「不幸」に襲われる。東京は集会や結社、表現の自由、検閲の禁止などを定めた憲法21条がテーマだ。
プレーヤーは各都市間で駒を動かし、サイコロを振って「kenpoバリア」を張って回る。防御に成功すると「もう戦争しません」(広島、9条)、「みんな人間らしく生きていくことができる」(仙台、25条)など、理念に基づいた暮らしを取り戻せる。
小5の塩山君「憲法がないと危険だとわかった」
一緒に遊ぶ相手は敵ではなく、協力し合う仲間。体験会では、東京の防御に成功して「好きなことを話し、みんなで集まれる。知る権利もあるよ」と21条を分かりやすく解説するカードを獲得すると、歓声が上がった。
参加した大阪市天王寺区の小学5年塩山素佳(もとか)君(10)は「難しかったけど楽しい。憲法がないと危険だと分かった」。ゲームで「1年(のうち)360日働く」という「不幸」に驚き、勤労の権利を規定した27条の大切さを知ったという。神戸市西区のマンション管理人堀口康介さん(33)は「憲法があるから今の生活ができていると実感した」と話した。
ボードゲームは、あすわかの武井由起子弁護士(51)が、子どもにも分かりやすく条文の意味や役割を学んでもらうツールとして、ボードゲーム製作の実績があるまちづくりコンサルタント安藤哲也さん(36)=川崎市=に協力を要請し、2年かけて開発した。
12日に都内でも体験会 8月の発売を目指す
自身は「9条しか知らなかった」という安藤さん。「当たり前にあるはずの憲法がなくなったらどうなるか、ゲームで想像できれば、大切さに気付く」と考えた。武井弁護士は「憲法がないと大変、と共感できるゲームになった」と手応えを語る。
今月末からクラウドファンディングで印刷代や部品代を集め、8月の発売を目指す。価格は1セット4000円前後になる予定。クラウドファンディングのサイトは、「キャンプファイヤー」で検索。
12日には東京都千代田区内神田1の「シャン・ドゥ・ソレイユ」で体験会を開く。参加費は大人1000円、小中高校生500円。「憲法ボードゲーム」のフェイスブックから申し込める。