えっ読書感想文コンクール、電子書籍は応募できない? 主催者が語る理由とは
「随時更新のウェブ作品は、内容確認が難しい」
青少年読書感想文全国コンクールは1955年から続き、全国最大規模。全国学校図書館協議会と毎日新聞が主催する。小学校低学年から高校までの5部門あり、主催者が選んだ本の「課題読書」か、自分で好きな本を選ぶ「自由読書」で感想文を書く。
公式サイトをのぞくと、電子書籍に関する規定は、応募要項にはない。ただ、「Q&A」のコーナーで「電子書籍を読んで感想文を書いてもいいの?」という質問に、「紙媒体での書籍に限りますのでご応募いただけません」とある。
なぜ、紙媒体に限るのか。コンクール事務局は「電子書籍などウェブ上の作品は随時更新されるケースもあり、感想文の内容が対象図書の内容に沿っているかどうか確認が難しい」と説明する。
書店や出版社のしがらみ?「紙にこだわりたい」
このほか、各地で地元新聞社が主催するコンクールがある。
下野新聞(宇都宮市)や宮崎日日新聞(宮崎市)のコンクールでは電子書籍を認めている。下野新聞教育文化事業部の福田佐和子氏は「これまで話題になったこともないが、電子書籍でもきちんと審査することになる」と語る。
一方、茨城新聞(水戸市)のコンクールは、課題図書を書店で購入するのが基本。電子書籍の扱いは「グレー」だ。事業部の中山美幸氏は「教科書を販売する書店には、各地の学校に募集要項を配布してもらうなど協力してもらっているので」と説明する。しかし、書店で買ったのか、図書館で借りたのか、さらに電子書籍を読んだのか。感想文からは「判断が付かない」(中山氏)と語る。
愛媛新聞(松山市)の読書感想文を担当する地頭所孝氏も「書店や出版社と連携してやっており、新聞社としても紙媒体にこだわりたい」と語る。
日本電子出版協会の清水隆事務局長は「紙で出版されず、電子だけの小説やマンガは珍しくない。昔は出版社が厳しくチェックした。今はやろうと思えば一人でもできる。数は把握できないほどある」と電子書籍の裾野の広さを解説する。
教育評論家「子どもの読書機会にふたをするな」
そんな時代の読書感想文コンクールのあるべき姿とは-。教育評論家の親野智可等(おやのちから)氏は「臨機応変に、電子書籍を受け入れる形に変えていく必要がある」と指摘する。
親野氏は元小学校教員。読書感想文の成否は「99%本選びで決まる」という。登場人物に自分の体験を重ね、本の世界と現実を行きつ戻りつし、自分の経験を掘り下げる。その過程を文章化し、自分を客観的に捉え、生の意味を肉付けしていく。親野氏は読書感想文の本質をこう説明する。
だからこそ、親野氏は「自分の経験と合う体験談を、同世代の子が電子書籍で書いていることもある。そんな本に出合い大きな感銘を受ける時、素晴らしい感想文が書ける。子どもの読書機会にふたをせず、すくい上げるコンクールであってほしい」と求める。