小中学生に1人1台のタブレット 国の配備計画、コロナで前倒し 静岡県内では端末奪い合いや財政など課題山積
コロナ休校で需要高いが…「年数億円は厳しい」
GIGAスクール構想は2019年に文部科学省が打ち出し、端末購入費の3分の2を補助すると決めた。当初、補助は「23年度まで」だったが、新型コロナを受け、20年度の4月補正予算で「年度内」に早まった。突如、計画が早まり、振り回される自治体には不満がある。
磐田市は購入は取りやめ、5年に分けて端末代を支払う借り上げ方式を選んだ。年ごとの負担は抑えられるが、支払総額は購入よりも割高。それでも数億円が単年に降り掛かる一括購入は財政面で厳しい。
市教委の松井信治主幹は「文科省の補助がなければ実現は難しい。『年度内に絶対にやれ』というメッセージと捉えたが、単年で数億円を用意するのは負担が大きい。耐用年数が経過して、新たな購入費に補助が出るのかも不安だ」と指摘する。
浜松市は一部間に合わず「取り合いで入手不透明」
「国は簡単に早めろと言うが、取り合いになって計画通り入手できるか分からない」と立腹するのは、浜松市教委教育施設課の袴田和徳課長。4万7000台は国の補助を受け、前倒しで確保を目指すが、残りの1万8000台は22年度内に整備する。県教委のまとめによると、県内の市町で唯一、21年度末までに全校への整備が間に合わない。袴田課長は「結局、全員分用意するのはかなり時間がかかるのではないか」と推し量る。
教育現場の不安も大きい。新型コロナを受けた臨時休校による学習計画の練り直しや、感染防止の校内消毒など教員の負担は従来より増している。
慣れぬ教員に研修負担「現場の事情くんでくれない」
静岡市内の小学校教頭は「行政は機器を整備すればいいが、実際に使うのは学校側。全く事情をくんでくれない。機器の使い方や授業への取り入れ方など学ぶことは多い。情報通信技術(ICT)に疎い年代の教員は研修など今以上の負担に耐えられないかも」と声を落とす。
「導入が早まったことで負担が増すのは分かっているが、付いてきてもらうしかない」と県教委ICT教育推進室の関大康(ひろやす)室長。「タブレットは学習の理解度をあげる有効な道具。自治体や教育現場は前向きに活用方法を探ってほしい」と話す。
オンライン授業実施した教員「対面と比べ、生徒の理解度7割」と指摘
川根本町の中学校2校は臨時休校中にオンライン授業を取り入れた。本川根中は、4月27日~5月18日、教室と生徒宅をビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」でつなぎ、休校前と同じ時間割で画面越しに授業した。実際に指導した教師は「対面での授業と比べ、生徒の理解度は7割ほどだった」と話す。
生徒がつまずいたときに指導できなかったり、手元が見られないなどの弊害があったという。小テストで定着度を確かめ、オンラインで実施した箇所を再び授業をするか、判断している。
鈴木高広教頭は「また休校になった時、オンライン授業は一応できるが、生徒の理解度は高いとは言えない。それだけで授業を終えて良いのかは迷いがある」と話した。