オンライン授業は「出席」か 自治体で分かれる判断 「受験の内申点に影響しそう」と不安の声も
在宅オンライン授業「出席停止・忌引等」
横浜市立の義務教育学校「霧が丘学園」(緑区)の小学部では、教室と自宅に分かれた児童がオンラインを活用して同時に授業を受ける取り組みを試行中。感染対策で、半数ずつ1日おきに登校している。教室に置かれたモニターの画面には、自宅でタブレット端末に向かう児童の顔が並ぶ。教員は教室の児童とカメラに視線を配る。
6年生の西潟奈乃羽(なのは)さん(12)は「オンラインでは先生の話が聞こえなくなることもあるし、先生がそばにいないので質問しにくい。教室がいい。でも、コロナの感染がすごくて不安もある」と話す。
こうしたオンライン授業は、受けても「出席」ではなく「出席停止・忌引等」と記録されることが多い。横浜市教育委員会も「登校した日は『出席』だが、オンラインの日は出席にも欠席にもしない」と説明。1日おきに登校すると、出席日数は本来の半分だが、欠席が増えることもない。
文科省は出席と認めず「対面が望ましい」
これは、今年2月の文科省通知に従ったもの。オンライン授業を出席扱いしない理由に、同省の担当者は「児童・生徒の発達段階を考えると、対面授業が望ましいから」と説明する。ただ、通知では自宅での学習成果を評価に反映させ、進級や進学が不利にならないよう配慮も求めている。
それでも保護者の心配は尽きない。先月25日から今月3日までオンライン授業をした東京都江東区の区立小も「出席」にしなかった。同区の小学生の母親(38)は「オンラインも出席にしてほしい。出席日数が内申点や成績にどう影響するか不安。特に受験生は気掛かりだと思う」と語る。
江戸川区は「出席と認めることも可能」
一方、隣の江戸川区教委は先月、オンラインでも学習成果を確認できれば「出席として認めることも可能」と区立の各校に通知。区教委の担当者は「児童生徒の不利益にならないよう配慮した」とする。
自治体によって分かれる対応。出席扱いとしていない横浜市の霧が丘学園の関口和弘校長(56)は「試行的な段階としては適切な措置だと思う。長期に及ぶようなら、改めて検討する必要があるだろう」とみる。
オンライン授業の「質」に差があり、一律判断が難しい
◇日本大文理学部の末冨芳(すえとみ・かおり)教授(教育行政学)の話
現時点でオンライン授業は「質」の差が大きい。1日を通じ対面と同じ内容をオンラインでやれるか、通信環境の問題などで一部しかできないかで大きく異なる。そのため、国として一律に出席と判断しづらい現状はある。対面とオンラインを比べた優劣を示す明確な証拠はない。
教育行政の基本は教育委員会や学校の裁量であり、デルタ株が蔓延(まんえん)する今は、現場の裁量で最適な手段を選ぶのが子どもを守ることになる。出席停止は、子どもに不利とならない配慮が必要だ。
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