川口いじめ、市教委が初めて被害者に謝罪も…一番知りたい「なぜうその報告をしたか」には答えず
「一歩前進だが何一つ解明されていない」
元生徒は2015年の入学後、サッカー部でSNSを使った嫌がらせを受けるなどし、長期間の不登校となった。市教委が設置した第三者調査委員会は2018年3月にいじめを認定した。さいたま地裁は昨年12月、学校や市教委がいじめの「重大事態」として扱わなかったことなどは違法として、市に55万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
茂呂教育長は「判決を重く受け止める。長い間、心身共に相当な負担をかけ、大切な中学校生活が悲しい苦しみの時間となったことをおわびする。学校や教育委員会がうそをついている、このことも真摯(しんし)に受け止める」と述べた。
ただ、元生徒が「なぜうそをついたのか」と問い掛けても出席者から明確な答えはなかった。終了後、元生徒の母親森田志歩さんは「謝罪に来たのは一歩前進だが何一つ解明されていない。今後も説明を求める」と話した。
直接いじめを相談していたのに…元校長は文科省や県教委に「話していない」と虚偽報告 その理由を問うと沈黙
手紙を書いた元顧問も「覚えていない」
謝罪に訪れたのは、元生徒のいじめの訴えにかかわっていた当時の学校と市教委の関係者ら。茂呂修平教育長から順番に謝罪の言葉を述べた。
その中で、松崎寛幸元校長は用意してきた謝罪文のメモを読み上げた。「早期の対応が必要であったと深く反省している。報告、連携、相談について不足だったと感じている。正しい情報が伝えられず、元生徒の話を十分に聞いてあげられなかった。助けられなかったこと、思いをしっかり受け止められなかったこと、深く傷つけてしまった」
しかし、実際には元生徒は、松崎元校長にいじめを直接訴えていた。元生徒は「松崎校長や教育委員会は、なんで文部科学省や県教委に、僕と話していないとか僕に会えていないとか、うそばかり報告してたんですか」と一番聞きたかったことを最初に質問した。
沈黙が続き、森田さんは「答えてあげてください」と促したが、元校長から答えはなかった。
元部活顧問の岩井厚裕教諭は、元生徒からいじめの相談の手紙を受け取り、返事も書いていたが「覚えていない」と答えた。
校長が第三者に見せた「笑顔の写真」
また、松崎元校長は裁判が続いている最中に、元生徒が笑顔で写っている写真を第三者に見せ「こんな表情しているんだから、いじめなど受けていない」と話していたことを認めた。森田さんが「息子はマスコミにも顔を出していない。職務上知った個人情報を広めていいのか」と詰め寄ると、茂呂教育長は「初めて聞いた」と話し、目をつむってうつむいた。
元生徒は学校や市教委の対応で心的外傷後ストレス障害(PTSD)となり、現在は精神障害の手帳を交付されている。この日はいつもより服薬を増やしてこの場に臨んだ。関係者が帰ると、ぐったりしてベッドに伏せてしまった。
森田さんは「学校や市教委の虚偽の報告や説明で、仲のいい友達も息子から離れてしまった。なぜあんなにうそをつかれたのか、何一つ解明されていない。一つ一つ疑問を解くことが治療にもつながると思うので、今後も説明を求めたい」と話した。