卒業式のマスク「原則非着用」 懸念は子どもが分断されること 茨城県教委の方針を現場はどう受け止めたか
声を出す「呼びかけ」ではマスク
笠間市立笠間小学校6年1組の国語の授業。出席した29人が、リレー形式で一文ずつ教材の文章を読み上げていく。教諭を含め全員がマスク姿。声が多少くぐもって聞こえるが、流れはスムーズだ。コロナ禍も4年目に入り、児童たちは「もう慣れた」と口をそろえる。
笠間小によると、今年の卒業生は155人で、式には卒業生と教職員、保護者のみが出席する。来賓は招かない。卒業生はマスクを外すが、校歌を歌う時や別れの言葉を述べる「呼びかけ」の時など、声を出す場合は着用する。いずれも茨城県教委や笠間市教委の方針に沿った形だ。
笠間小のコロナ対応は、他の教育現場と同様、感染状況や行政の方針に左右されてきた。2020年3月の全国一斉休校の後も数回、学級閉鎖や学年閉鎖を余儀なくされた。現在も体育の授業や登下校の時を除き、手指消毒や給食時の「黙食」とともに、マスク着用も続けられている。
「最後ぐらいなくてもいいかも」
今回の方針転換について、石井健校長は「児童は長くマスク生活を続けており、式だけ着けないというのは抵抗があるかもしれない」と指摘。笠間小は教委の方針を踏まえ、マスクの非着用を強制することもしないが、その結果、マスクをするかしないかで子どもたちの間に分断を生んでしまう懸念もあるという。
一方、児童たちは、卒業式でのマスク非着用をおおむね好意的に受け止める。6年の市毛翔さん(12)は「僕はそろそろ外して生活したい。着けていると声が通りにくいし」。6年の鈴木隆太さん(12)も「またコロナにかかる人が増えてしまうなら別だけど、最後ぐらいはないほうがいいかも」と話した。
再び感染拡大したらどうする?
3月17日の卒業式まであと1カ月弱。笠間小は予行演習をし、マスクを着用しないことに伴う問題点を洗い出す方針だ。ただ、石井校長は「再び感染が拡大する恐れもある」とも。その場合、教委の方針が変わらないとも言い切れないとして、感染状況の先行きを注視している。
卒業式でのマスク着用を巡っては、永岡桂子文部科学相(衆院茨城7区)が今月2日、家庭の判断で外すことも可能と国会で答弁したが、その日のうちに「決まっていない」と軌道修正。今月10日になって、非着用を基本とするとの方針を各地の教委に通知したと発表した経緯がある。