英語スピーキングテストは今年も11月下旬 前倒し求める声は無視 音漏れ、採点ミス、志望校選びへの悪影響…問題山積のまま
英語スピーキングテストとは
東京都教委と協定を結んだベネッセコーポレーションが運営。音を遮断するイヤーマフとマイク付きイヤホンを使い、タブレットを見ながら15分間で8問に解答。2022年は11月27日に本試験、12月18日に予備試験があり、約7万1000人が受験。都立高入試の総合得点1020点のうち20点を占めた。
都教育庁「能力を適切に測れた」
事務局の都教育庁は4月から、テストを担当するグローバル人材育成部を新設。滝沢佳宏部長は定例会で、昨年度のテストを「生徒の『話すこと』の能力を適切に測ることができた」と総括した。一方で、「(テスト中に)他の生徒の声が聞こえたとの報道が一部にあった」と認め、「解答に影響を与える事例の報告はなかったが、生徒がより集中できる受験環境を整備していきたい」と説明した。
都教委はスピーキングテストの対象を中学1、2年生にも拡大する方針で、本年度予算に35億円を計上。時期は検討中という。
署名活動を行った中2の訴え「都教委は今からでも中学生の声を聞いてほしい」
昨年は英語教育の関係者らが反対署名
テストの導入を巡っては、保護者や専門家たちが繰り返し問題点を指摘し、署名活動や記者会見を開いて「反対」を訴えてきた。
都議会でも昨年10月、テストを都立高入試に使わないよう求める条例案を審議。条例案は否決されたものの、導入反対の声は消えなかった。翌月、大学教授らが都を相手に、テストへの公金支出差し止めを求めて提訴。英語教育関係者らは、2万3600筆の反対署名を都教委に提出した。
そんな中、都教委はテストを実施。だが「他人の解答が聞こえた」という音漏れの報告が相次いだ。
フィリピンで採点されたテスト結果の到着は年明けとなり、教員らは生徒の進路変更に苦慮した。採点ミスは都立高入試の願書締め切り直前に発覚し、受験生に動揺を与えた。それでも浜佳葉子教育長は都議会で「適切に実施された」などと述べ、テストを検証するという姿勢を見せない。
塾に行けない子も 入試に使わないで
「中学生の意見を聞かず次世代に引き継いでしまうのは良くない。声を上げるべきだと思った」。黙っていられない中学生がいた。板橋区立中2年、安達亮真(りょうま)さん(13)は昨年11月、「私の周りには(テスト対策に必要な)塾に行けない子もいる」とし、テストを入試に使わないよう求める陳情を板橋区議会に出した。
きっかけは昨年8月、母桃子さん(45)と参加した都教委への要請行動。質問を重ねると、事務局の職員は何も言わずに手で制した。「当事者は子どもたちなのに」
違和感を抱いて陳情を出した後、商店街などで家族らと署名を集め、956筆を板橋区議会に出した。陳情は3月、不採択になったが、安達さんは望む。「都教委は今からでも中学生の声を聞いてほしい」