保護司の役割とは 「悪い子はいない。社会がそうさせている」の信念で、大きな犯罪の芽を摘む
保護司
刑務所からの仮出所者や、非行で保護観察になった少年らとの面談などが主な業務。任期は2年で、再任を重ねれば78歳に達するまで活動できる。全国に約4万5000人いるが、なり手不足で定員を下回っており、法務省は制度を見直す有識者検討会の立ち上げを決めている。
面談、受け入れの調整、啓発・・・
保護司は非常勤の国家公務員だが、交通費などが支給されるだけのボランティア。主な仕事は、元受刑者や非行少年との面談をはじめ、刑務所や少年院に入っている人の釈放後の受け入れ態勢の調整、犯罪予防の啓発活動と多岐にわたる。
「農協時代から知っていたし、抵抗感や警戒感などはなかった」という。面談は1人につき月2回程度で、30分ほどになることが多い。「最初のうちはどう接すればいいのか分からず、こっちが面接されてる気分だった」と振り返る。
どうすれば信頼して話をしてくれるのか、考えながら接している。「真面目にやらなきゃ」「何か困ったことは」と声をかけ「少しでいいから貯金をしよう」と生活のアドバイスもする。「上から目線にならず、なるべく寄り添う姿勢が一番大事。テレビの話題など雑談を交えたり、自分の若い時の体験を話したりする」
1人1人をみると、みんな良い子
20年以上、少年との面談を続けてきたが、素直な態度で応じる少年がほとんどという。「昔も今も窃盗が多い。昔に比べ、うち解けやすい子が多くなったが、さほど大きく変わった印象はない」と感じている。
ただ、面談していた保護観察期間中に罪を犯し、再び逮捕された少年もいた。少年院から届いた手紙には「うそをついていました」と謝罪の言葉がつづられ「改心したので、出たらまた行きたい」などと書かれていた。その後は更生し「彼女ができました」と報告もあった。「良い報告をもらった時は、何事にも代えがたい瞬間。やってきて良かったと思う」と語る。
「1人1人をみると、みんな素直で良い子。家庭や環境に問題がある場合が多く、特に悪い交友関係があると、だめになってしまう」と話す。「悪い子はいない。社会や大人がそうさせている」というのが信念だ。「だから社会や大人が受け入れ、目が届くようにすれば、もっと犯罪は減らせる」