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【ニュースがわかるAtoZ】岐路に立つ児童相談所 子どもを守る要だが、役割の見直しは急務

(2019年8月19日付 東京新聞朝刊)
 児童虐待が増え続ける中、子どもを守る要として注目される児童相談所。非行や不登校、障害などの相談にも幅広く応じ、子どもと保護者を支援する福祉機関だ。時代の変化とともに付加されてきた役割やあり方の見直しも迫られている。

〈時代とともに変わる役割〉戦争孤児、非行、不登校、虐待… 支援と介入

◇障害の判定も

 児童相談所(児相)の出発点は、戦争孤児の保護だった。家族を失い路上で暮らす子どもたちを守るため、1947年に制定された児童福祉法に基づいて児相が各地に設置され、孤児を保護し施設に収容した。

 それから約70年、児相が向き合う課題は時代とともに変化してきた。非行だけでも、貧しさを生き抜くための窃盗から薬物乱用、校内暴力、性の逸脱など内容や子どもの年齢はさまざま。70年代には知的障害児が福祉サービスを受けるために必要な療育手帳を交付するため、障害の程度を判断する業務が加わった。80年代には、学校に通わない不登校相談が増えた。

グラフ

 

◇90年代に転機

 児童虐待が中心テーマになるのは90年代後半からで、児相はそれまでの課題とは違う対応が求められるようになった。明星大の川松亮(あきら)教授(児童福祉論)は「不登校や子育て支援などは保護者からの相談によって始まり、児相が『支援』する。一方、虐待は相談意欲のない保護者へ、児相の方から『介入』する必要がある」と説明する。

 児相が、どう虐待に対応しているのか見てみよう。泣き声を聞いた住民や警察、学校などから情報が寄せられたら、まず子どもの安全を確かめる。「48時間以内の確認」がルールだ。子どもが家庭にいると危ないと判断した場合、児相に付設された一時保護所などに子どもを保護する。詳しく調査し、家庭に戻ることが難しい場合には児童養護施設や乳児院、里親に預ける(措置する)。

◇全国に215カ所

 子どもが家庭に戻れるように保護者を指導・支援したり、子どもの心をケアしたりするのも児相の仕事だ。施設などで暮らせるのは原則18歳までで、家庭に戻れない場合は進学や就労など自立に向けて支援する。

 今年4月1日現在、設置が義務づけられている全都道府県と全政令市のほか、中核市の金沢市と神奈川県横須賀市、兵庫県明石市に計215カ所ある。

〈多忙…追いつかない対応〉虐待件数が9倍増、でも児童福祉司は2.6倍

◇死亡事件続く

 児相が対応する児童虐待相談件数は増え続け、厚生労働省によると2018年度は前年度から約2万6000件増えて15万9850件(速報値)。特に、父親が母親を殴るなどの配偶者暴力を子どもに目撃させる「面前DV」の通告が増えた。

 児相がかかわりながら命を守れなかった事件も続いている。18年に東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5つ)、今年1月には千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん=同(10)=が一時保護から家庭に帰された後、亡くなった。

◇1人で50件を

 背景の一つに、児相の多忙さがある。対応する児童福祉司が足りない。児童虐待防止法が施行された00年度と18年度を比べると、虐待対応件数は9倍に増えたが、児童福祉司の数は2.6倍にとどまる。1人が受け持つケースは約50件(虐待以外も虐待の業務量に換算)で、川松教授によると、欧米の約20件より格段に多い。

 子どもを保護されると児相を敵視する保護者もいる。児童福祉司にかかるプレッシャーは強く、体調を崩すなどで異動を希望する人も多い。その結果、勤続5年未満が約6割を占め、深刻な虐待の見極めなどの技術や専門性のある職員が育たない。宮島清日本社会事業大教授(児童福祉論)は「本来は子どもの幸せをつくる夢のある仕事。意義や喜びを感じられないと命は守れない」と訴える。

◇増強策に限界

 国は、22年度までに児童福祉司を約5200人に増やす計画だが、育成には現場で先輩職員に教わりながら経験を重ねることが不可欠。今年4月時点で必要人数より185人不足する東京都の担当者は、「毎年30人増やすのが限界」と話す。

 児相の体制強化策として、今年6月に成立した改正児童福祉法などに、一時保護など家庭に介入する職員と保護者を支援する職員を分けることや、児童福祉司の資質向上も盛り込まれた。役割を整理し、あり方を根本的に見直す時期にきている。