脳性まひの作家・中村勝雄さんが新作「空と海と校長先生」 子育て体験を小説に

志村彰太 (2023年9月28日付 東京新聞朝刊)

新作について話す中村勝雄さん=横浜市中区で

 脳性まひで不自由ながら、比較的動かせる右手を使って執筆活動を続ける作家の中村勝雄さん(62)=横浜市金沢区=が、子育ての体験を基に創作した小説「空と海と校長先生」(悠人書院)を出版した。自身にとって4作目で、「子育てに悩んでいる人に読んでほしい」と話している。

主人公は「脳性まひの売れない小説家」

 中村さんは神奈川県立平塚養護学校(当時)を卒業し、1999年に作家デビュー。今作は、2004年に生まれ、1歳2カ月で亡くなったダウン症の長男を描いた2011年の「もう一度、抱きしめたい 脳性まひの僕に舞い降りたダウン星の王子さま」(東京新聞出版局)以来、12年ぶりの新刊となる。

 物語の舞台は、横須賀市の沿岸をモデルにした県内の街。脳性まひの売れない小説家、西崎武志を主人公に、長男の空、4歳離れた次男の海、妻で人気イラストレーターの美樹との日々を描く。空の小学校入学から卒業までの6年間、学校などで起こるさまざまな「事件」に武志が関わっていくストーリーだ。

息子がいじめられないか、不安の中で…

 武志は、空が父親の障害を理由にいじめられないかという不安を抱えていた。だが、子どもたちからは電動車いすに乗りたいとせがまれ、むしろ人気者に。「ママ友」と情報交換しながら、校内で起こる出来事の背景を探っていく。息子の成長を見守りながら、同級生が直面する虐待や差別、性的少数者(LGBTQ)の生きづらさといった問題に向き合う。

 中村さんは「ほとんど創作」と語るが、自身の子どもも4歳違いの兄弟。小説には、小学2年だった息子に排せつの手助けをしてもらったことや、電動車いすに乗せて送り迎えをしたことなど、実話もちりばめた。物語に登場する小学校は段差が全くないバリアフリーで、2人の息子が実際に通った横浜市立小学校をモデルにしている。

小学生の子育ては大変だが、一番楽しい

 執筆のきっかけは、上の息子が高校生になったことだという。思春期を迎えて会話が減る一方、悩みを抱え込んでいる姿を目の当たりにして「ランドセルの方が大きく見えた小学校の時は良かったな、と。その光景が忘れられなかった」と筆を執った。

 「小学生の子育ては大変だが、一番会話があり、楽しい時期だ」と中村さん。子どもの成長を支えた教員への感謝も込め、書き上げた。

 本は四六判、224ページ。税込み1650円。悠人書院のWebサイトなど、ネットで購入できる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年9月28日

コメント

  • お元気な中村さん! 4作目、生まれましたね。 さっそく発注しましたよ。 中村ワールドに早く浸かりたいです。
    活子さん 女性 60代