日本一人口が少ない村・青ヶ島に「離島留学」しませんか? 2025年4月から1年間、小中学生を募集

川上義則 (2024年5月23日付 東京新聞朝刊に加筆)
 伊豆諸島の最南端にある青ヶ島村が、島の小中学校に2025年4月から1年間通う「留学生」を募集している。これまで島の有志が取り組んでいたが、2025年度から村の事業になる。島の子どもは少なく、学校の維持には島外の子どもが欠かせない状況。有志は、留学生に豊かな自然の中で生活してもらうなどして支援を続ける。

青ヶ島の全景=2016年、本社ヘリ「まなづる」から

この2年は5人が留学 SNSで発信も

 青ヶ島村は人口162人(5月1日現在)と国内でも最も少ない自治体。子どもの数も少なく、島唯一の村立中学校は2022年度に生徒ゼロが見込まれたが、青ヶ島製塩事業所社長の山田アリサさん(62)が中学に通う留学生を募集し、3人が応じて休校を免れた。

 留学生は2023年度2人、2024年度3人。留学中は山田さんの自宅に住む。食事の支度を手伝い、鶏を世話し、週1回は地域の女子バレーボール部の練習に加わる。学校の課題で島の歴史を調べ、SNSで島の様子を発信する。

2024年度に留学した中学生たちと里親の山田アリサさん(左から2人目)。後方は地熱によって水蒸気が噴出する穴(ひんぎゃ)が多数みられる斜面=青ヶ島村で

 2025年度も山田さんが中学生の里親になる。山田さんは「青ヶ島での体験を島外に発信してほしい」と期待する。

 留学生たちは、自然の厳しさと豊かさを体験する。特別なイベントを用意しているわけではないが、山田さんは「留学生たちには都会では味わえない時間を過ごし、何かを得てもらえればうれしい。今年3月に都会に戻った留学生の一人は戻る直前、『帰りたくない』と話していた」と振り返った。

保護者負担は月3万円、村が5万円補助

 村教委は少人数学級を生かし、各生徒に合わせた教育を目指す。村立中の教員は11人。田中孝明教育長(40)は「1対1の授業も多く、苦手教科はゆっくり、得意教科は先に進められる」と話す。

 島の里親が受け入れる留学生は小学4年~中学生が対象で、保護者は月3万円を負担し、村が5万円を補助する(月16日以上滞在の場合)。親も同行する場合は小学1年~中学生が対象で、村営住宅の家賃を減免する。

 募集は7月19日までで、いずれも若干名。問い合わせは青ヶ島村 離島留学推進協議会 事務局=電話04996(9)0201=で受け付けている。

青ヶ島

 東京都心から南へ358キロ。有人の島としては伊豆諸島で最南端にある火山島。二重カルデラの地形は世界的にも珍しく、米国のNGO「ONE GREEN PLANET」から「死ぬまでに見るべき世界の絶景13」に日本で唯一、選ばれた。人口162人(5月1日現在)で「日本一人口の少ない村」。

 東京23区から青ケ島に赴くには、八丈島まで飛行機か船で渡り、さらにヘリコプターか船を使う。風が強かったり、霧が濃かったりすると、欠航して物資が届かないことも。一方、地熱によって水蒸気が吹き出す穴「ひんぎゃ」が無数にある場所もあり、そこでは調理に使える「地熱窯」がいくつも設置され、誰でも自由に使える.

離島留学とは

 全国の子どもたちが離島に住民票を移し、1年単位で島の学校に通う。小中学校への留学は1986年度に新潟・佐渡島で始まった。全国から入学者を募る高校の離島留学は2003年度、長崎県立の4校で初導入。地元住民が子どもを預かり通学させるほか、高齢化で預かり手が少ない自治体では合宿所を造るなどしている。親子での移住を受け入れる自治体もある。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年5月23日