リスやツシマヤマネコの生活は?生きものや動物園の仕事について学ぶ【こども記者が行く!井の頭自然文化園編】
開園前の動物園に潜入
午前8時半すぎ、ツアーは正門前からスタート。この日の案内役、動物解説員の山崎彩夏(さいか)さんがさっそく「門を開ける準備をしています。安心して園を利用してもらうために、門には案内専門のスタッフがいるんですよ」と教えてくれました。ツアーの前日は、台風7号の影響で臨時休園に。風で落ちた葉っぱの掃除など、準備作業はいつもより多めです。
開園前は、売店に商品を運んだり、ごみを外に持って行ったりする車の出入りも多い時間帯。外から入る車は入り口の「車両消毒装置」で消毒します。「動物たちに健康に暮らしてもらうため、病気を持ち込まないことが大切です」と山崎さん。こども記者たちは熱心にノートにメモを取っていました。
動物園の台所ってどんなところ?
次に見学したのは、「動物園の台所」とも言われる動物飼料調理室です。普段は入ることができない場所で、今回のツアーでも、こども記者だけ特別に取材が許可されました。病気を持ち込まないよう、長靴に履き替えて消毒。みな緊張した表情です。
約160種類の動物を飼育しているという井の頭自然文化園。この調理室で、肉や魚、野菜や果物など、動物たちに合わせた餌を用意します。「餌の条件は、①野生で食べているのと同じような栄養バランス②手に入りやすさ③値段が安いこと」と山崎さんが説明します。園では、餌代が年間2000万円ほどかかるそうです。
調理室を出て、ペンギンのいるプールの清掃作業や、モルモットなどの飼育施設を見ながら、約50匹のニホンリスがいる「リスの小径」へ。リスが逃げないよう、二重扉になっている施設に入ると・・・朝から元気なリスたちがこども記者を出迎えてくれました。足元を活発に走り回るリスたちに「わ~」「いた!」と歓声が上がります。
リスの小径で聞こえてくるのは
ここでは、餌やりの様子を取材しました。クルミやリンゴ、ヒマワリの種、煮干しなどの餌が入った容器を手に、飼育担当の大河原陽子さんが「リスが一番好きなのは何だと思う?」と、こども記者たちに逆質問。「う~ん・・・」と首をかしげるこども記者たち。答えはオニグルミ。「チャッチャッチャッ」とかじる音も聞こえてきました。クルミを持って木の上に駆け上がるリスも。「あそこ!」と、リスの素早い動きを目で追い、間近で観察しました。大河原さんはリスの歯形が残るクルミも見せてくれました。40分ぐらいかけて食べるといいます。
質問タイムでは、リスは「朝が一番活発」との説明を聞いた小学5年の玉村環奈さんが「夜は何をしているのですか?」と聞きました。「私たちと同じ。おうちに帰ってお休みしています」と大河原さん。
小学3年の小畑夏穂さんは「体調を崩しやすい時季はありますか?」と質問。「特に体調を崩しやすい時期はないですが、季節によって見られる行動が変わります。夏は暑いので、木の枝にベターッとくっついたりしています。逆に寒い冬は体を丸くしています」と教えてもらいました。
台風が去り、朝から暑かったこの日、リスの水分補給が気になったのは小学4年の土井晴(はる)さん。「水を飲む回数は?」と尋ねました。大河原さんは「回数は分からないけれど、結構飲んでいるかな。暑い日は泳いだりしていますよ」と説明してくれました。
最後に取材したのは、絶滅危惧種のツシマヤマネコです。約160種類の動物のうち、140種類ほどが日本の動物という井の頭自然文化園では、数が少なくなった動物たちを守って増やす活動にも取り組んでいます。
「ツシマヤマネコは、森や林が少なくなったり、交通事故に遭ったりして、野生では長崎県対馬に100匹ぐらいしかいないんです」と動物解説員の山崎さんの説明を、こども記者たちも真剣な表情で聞きました。18歳の「もも」は人間の年齢では100歳くらいと高齢です。警戒心が強いため、まずは運動場に出る様子をこども記者だけで静かに見学。ヒョウに似た斑点模様のももが外をうかがう様子が見えました。
園の夏限定アイス食べた後は
暑い中、取材を終えたこども記者たちは、園内のフード&ギフトショップ「こもれび」で、夏限定の「アオバトの海風ベリーサンデー」と「リスの小径アイス」を試食。園では、訪れた人に楽しんでもらえるよう、グッズやカフェのメニュー開発にも力を入れているそうです。冷たいスイーツに、子どもたちの笑顔が広がります。
8月からデザインが新しくなったという年間パスポートの紹介もありました。ちなみに、2023年度の年間入園者数は約70万人ですが、そのうち約10%は年間パスポートで入園しているそうです。年間パスポートは一般1,600円と入園料4回分の金額で1年間に何度でも入園できるということで、保護者の方にもうれしい情報でした。
<年間パスポートの詳細はこちらの記事もご覧ください>
井の頭自然文化園の年間パスポートを使ったお得な楽しみ方をご紹介!(こちらは記事広告です)
休憩後は、もうひとふんばり。取材した内容を基に、1人1枚のオリジナル新聞を作ります。
小学6年の松本拓士(たくと)さんと、小学4年の土井さんはツシマヤマネコについて記事にまとめました。「のこり100ぴきもいない ぜつめつきぐしゅのツシマヤマネコ」と見出しを付けた土井さんは「大切に守っていかなければいけないと思った」と話していました。
ニホンリスの記事を書いた小学5年の玉村さんは「まとめるのが大変だった。思っていることを、書き言葉にして伝えるのが難しかった」と言います。
午前11時半、体験イベントが終了。松本さんは「リスの住んでいるところは自然がいっぱいで、空気がきれいだった」と笑顔で振り返っていました。
取材のアドバイス役を終えて
台風一過で暑くなったこの日。熱中症対策をしつつも子どもたちの体調が心配でしたが、こども記者たちは水分補給や休憩を挟みながら、熱心に取材し、新聞づくりに取り組みました。
ニホンリスの素早い動きを追い、写真を撮る子。絶滅危惧種のツシマヤマネコをじっと観察する子。説明してくれた山崎さんや大河原さんの話をノートいっぱいにメモした子もいました。飼育の裏側、いつもは見たり聞いたりできないことを取材できる緊張感やわくわく感が伝わってきました。
「知りたい」「伝えたい」というシンプルな気持ちが、原動力だったのかもしれません。こども記者たちの姿に、逆に私がアドバイスをもらったような時間でした。