10連休で「祖父母に孫を…」 預ける側/預かる側の注意点 親しき仲でも気配りを

(2019年4月19日付 東京新聞朝刊)
 今月末から始まる10連休。保育園などが休みになることを受け、祖父母の中には、仕事を休めない娘や息子夫婦から孫の世話を任されている人もいるのでは? ただ、今年は、例年のゴールデンウイークや年末年始より休みが長い。何日間にもわたって預かる場合、事前の話し合いを怠ると、思わぬ衝突を招きかねない。

<親>「悪いけど」のひと言と、事前に費用分担の話し合い

 「孫を預ける娘や息子にとって、祖父母世代はいつも元気で、経済面でも心配がない存在」。しかし、各地で祖父母向けに孫育ての講演をしているNPO法人「孫育て・ニッポン」(東京)の理事長、棒田明子さん(51)によると、そうでない場合も目立つ。

 祖父母の体力は、子ども世代が考えている以上に衰えていることが多い。一方の孫は日に日に成長し、体力も十分だ。「一人でできることが少ない赤ん坊のころより手がかからなくて楽でしょ?」と安易にお願いすると、動きも活発、口も達者で「面倒を見るのが大変だった」という声も。預ける時に「悪いけれども」といった言葉を添えるだけでも印象は違う。

 経済的な面への配慮も大事だ。特に既に退職している場合は、現役時代に比べ懐事情が苦しい可能性も。「食費一つとっても1泊なら大したことがないが、長く滞在すればかなりの額になる。子ども世代がしっかり払う姿勢を示すなど、費用分担は事前に話し合っておくと互いに嫌な気持ちにならない」と助言する。

<祖父母>張り切りすぎず 近所の公園や夕飯づくりで十分

 祖父母側も気を付けなければいけない。張り切りすぎは禁物だ。「せっかく来たんだから、いろいろな所に連れて行きたい」と思いがちだが、観光施設はどこも混んでいる。交通費や入場料、食費など出費もかさむ。揚げ句、自分だけでなく孫も疲れ、連休明けに体調不良で学校や保育園を休むことにもなりかねない。

 孫の年齢が低ければ、近所の公園などがお勧め。孫も十分楽しめ、祖父母もお金や体力を使わずに済む。もう一つは、孫と夕飯を作ること。一緒に近所で買い物をし、自宅で調理する。親は普段忙しく、包丁や火の使い方などを教えていないことも少なくない。「時間がない中、急いで調理をする必要もないし、孫は遊びと同じように調理を面白がってくれる」

<祖父>孫が帰った後、疲れた妻に「おい、飯は?」はNG

 「孫育て・ニッポン」では、祖父母と子どもの世代がぶつからないよう、「孫育て10か条」と「祖父母とのおつきあい10か条」をそれぞれ作り、ホームページで公開している。今回の大型連休で、子ども世代が肝に銘じたいのは「祖父母の生活、年齢、体力を気にかける」「預けた時は(育児の方法などについて)文句を言わない」の二つ。

 一方、祖父母世代は「手、口、お金は出しすぎず、心と体力にゆとりを! 断る勇気も持とう」の文言だ。その上で「大切なのは『ありがとう』『ごめんなさい』をきちんと言うこと。親しき仲にも礼儀あり、を忘れないで」と棒田さん。互いに感謝を伝え合うことが、気持ち良く連休を過ごす最大のポイントだ。

 もう一つ、注意したいのが孫を親元に返してからのこと。主に祖父だが、連休中、孫の世話で疲れ切った妻に「おい、飯は?」「孫の面倒は見て、俺のことは放っておくのか」などとデリカシーのない言葉をかけてしまう人が少なくないという。すぐに「日常に戻った」と思わず、互いに疲れをねぎらおう。