医師 石蔵文信さん 昔できなかったから…3人の孫育て「させていただく」

(2019年3月17日付 東京新聞朝刊)

家族のこと話そう

(伊藤遼撮影)

自転車3人乗りで保育園へ 夕飯やお風呂も

 近くに住む長女の子ども3人の孫育てをしています。医師の妻と2人暮らしですが、共働きの娘夫婦が朝、孫たちを連れてきて一緒にご飯を食べます。娘の夫と登校する小学1年の孫娘を見送った後、自転車の前と後ろに女の子と男の子の園児2人を乗せて保育園へ送ります。夕方、妻は仕事をしているので、園児2人を迎えに行った後、3人にご飯を準備して、お風呂に入れます。夜、娘夫婦が連れて帰ります。

 孫たちは私のことを「じいじ」と呼んで懐いてくれていて、かわいいと思います。でも風邪をひいたり、むやみやたらに泣いたり、ごはんをちゃんと食べなかったり。だいたいは、しんどいことの方が多いです。

医学部同士の学生結婚 妻「育児や家事もっとやって」

 妻とは三重大医学部のテニス部で知り合い、私が6年、彼女が3年のときに結婚。卒業後、すぐに長女が生まれました。大阪市に住んでいて、妻は午前6時に家を出て、大学に通います。私は長女にミルクを飲ませ、おんぶひもで背負い、勤めていた病院に地下鉄で通いました。今のように男性の育児に理解がある時代ではありません。周りの人からは「奥さんに逃げられたんかいな」という目でみられていましたが、気にしても仕方ないと思っていました。

 当時勤めていた病院の近くに子どもを預かってくれるおばあさんがいて、そこに預けていました。時々、娘を迎えに行った後、担当の患者さんの容体が急変したことを知らせるポケベルが鳴り、病院へ引き返すこともありました。その時は帰り際の看護師に頼んで娘をみてもらい、処置をしました。

 でも妻に比べたら、私は全然、子育ても家事もしてこなかったと思っています。妻からは「もっとやって。忙しいんだから」としょっちゅう言われ、けんかもしました。妻は産休以外にほとんど休まず、3人の子育てと家事をしてくれました。本当によくやってくれたと思っています。

私以外は忙しいから…孫育てのため大学を早期退職

 長女も医学部で学生結婚。孫ができたので、大学の教授をしながら孫育てをしていましたが3人目の孫ができた2年前、定年まで4年残して61歳で退職しました。無理をしたら続けられたんでしょうが、時間に追われる生活は、もうそろそろやめようと。今は一部の外来と講演会などに仕事をしぼっています。

 せっかく孫がいて、私以外のみんなが忙しいのであれば、昔、できなかった自分が、やり直しをさせていただこうという気持ちです。そういう気持ちで孫育てをしていると、ものすごくつらいという感覚はありません。 

石蔵文信(いしくら・ふみのぶ)

 1955年、京都市生まれ。三重大医学部卒。循環器科専門医。2001年から男性更年期の外来を始めた。夫の言動で妻の心身が不調になる「夫源病(ふげんびょう)」の名付け親。「なぜ妻は、夫のやることなすこと気にくわないのか」などの著書がある。

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